<遠野便り>
馬たちとの暮らしから教わること
第12回
9月:みのり
馬の<野生>、人の<野生>
さて。昨年の10月から月に1回、筆者が暮らしている岩手県の遠野という地域の四季折々の風景とともに、そこでともに暮らしている馬たちのことを書いてきました。タイトルを「馬たちの暮らしから教わること」としたように、できるだけ馬たちが前面に出て、人物や人の暮らしの風景はあえて背景にとどまるようになればいいなと思ってきました。
1年がぐるりと回ったこの回でひとまず馬との暮らしのあれこれのお話を閉じようかなと思います。
皆さんに伝えたいことがあったとすれば、馬にかぎらず、ほかの動物たちとの付き合い方を模索し学ぶことは、私たちが生きる時間を豊かにしてくれるということです。以前、『びお』の初代編集長の尾内志帆さんらが中心にとなって編集・発行してきた遠野市のフリーペーパー『へいいプレス(Heii Press)』に、「既知の<外>へ」と題し、やや気負い気味に馬との関係性の<未来>について最後に考察しました。けれどもこの12ヶ月で皆さんと共有したかったことは今も変わりません。最後の部分を書き換えながら再掲すると、こんなふうなことを今もなお伝えることができたらと思っています。
季節は巡り、秋が深まってきました。来月になると紅葉の季節を迎え、そしてまもなく森はすっかり落葉し、2ヶ月後には雪の便りも届きます。馬たちは、今、秋風吹く高原の抜けるような青空のもと、日がな草を食みつづけています。そうやって皮下脂肪を蓄え、被毛を冬仕様に変え、来る寒さの季節に備えています。まさに9月は天高く馬肥ゆる季節です。私たち人間も、北国の山里の長い冬を過ごすための準備を少しずつ始めたいと思います。また馬たちとともにお会いしましょう。それから。いつか馬たちに会いに来てください。