びおの珠玉記事

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バレンタインは旬か?

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2012年02月14日の過去記事より再掲載)

loveyouチョコ

2月14日は、「聖バレンタインデー」。
喜ぶ人あり、悲しむ人あり、面倒だと思う人あり、お返しに怯える人あり。
そんなの関係ないよ、と決め込んでいる人だって、お店のチョコレート売り場や報道等で、このイベントを知らなかった、ということはないでしょう。
国民的行事ともいえますが、果たしてこれは「旬」なのでしょうか。

旬とは何か

「びお」は、自然と呼応する暮らしをしよう、と呼び掛け、旬の食べ物や行事を紹介してきました。

「旬」とはいったい何なのでしょうか。

「旬」は、中国最古の王朝・殷で用いられていた10日に1度の暦の単位です。日本では、1日、11日、21日に行われた天皇による儀式を旬と呼びました(上旬、中旬、下旬という言葉は、本来の意味を残しています)。

こうしたことから、元来は10日単位を示すものですが、やがて天皇による儀式は4月(孟夏の旬)と10月(孟冬の旬)だけになり、このときに最盛期の食材を供したことから、「旬」が、食べ物の美味しい時期をあらわすようになりました。

バレンタインデーの由来は、3世紀のローマ・クラウディウス2世の時代に起源があるといわれています。クラウディウス2世は、兵士の戦意に支障をきたすとして、若者の結婚を禁じました。これに対し、キリスト教の司祭だったバレンタインは、秘密裏に若者達を結婚させていました。バレンタインのこの行為は露呈し、捉えられ、処刑されることとなりました。この日が2月14日だったと言われています。どこにもチョコレートは出て来ませんね。

バレンタインの話には諸説あるのですが、いずれにしても、チョコレートが出てこないことは共通しているようです。チョコレートを送る風習は、近年の日本で販売側が仕掛けた販促策とされていますが、ここまで見事にはまるとは、恐れ入ります。

日本での「旬」の使い方は、
「そろそろ蕗の薹ふきのとうが出てくるね」

とか

「ミカンの旬も終わりだね」

という使い方です。「バレンタインデーが旬だね」という言い方には違和感がありますね。
一方で、「もうバレンタインデーの時期だね」という表現には、それほど違和感がありません。
本来の「旬」は、決められた10日間を指すものだったので、そういう意味では「バレンタインデーの旬」は正しいのかも知れません。
バレンタインプレゼント

融通無碍ゆうづうむげな多神教が根底に

バレンタインデーやクリスマスを否定的にみる意見として、「うちはキリスト教徒じゃない」というような話を聞くことがあります。じゃあ、そういうあなたの信仰は何?

正月には神社に初詣に行き、七五三でも神社を詣で、盆には寺の墓で先祖を参り、キリスト教式教会で結婚式をあげ、仏式の葬式で送られる。まるで宗教行事の寄せ鍋のような状態ですが、多くの日本人に見られる、「普通」のことだと言えるでしょう。

敬虔けいけんな仏教徒の誤解を恐れずにいえば、「仏式の葬式を行う多神教」とでもいえるのかもしれません。

日本では、アニミズムがベースになっている多神教が古くから根付いてきたため、仏教が伝来しても、「神様仏様」として、一緒にしてしまうという融通無碍さがありました。
比較的最近になって根付いたバレンタインデーを、それと同じにするのは乱暴かもしれませんが、ある面でとても日本的なことでもあります。
それに、バレンタインデーの由来にしても、ローマ国教とキリスト教の力の争いだったといえるかもしれませんし、クリスマスにしても、ミトラ教の祭典にキリスト教が乗じたものともいえるわけです。
以前「びお」でも少し触れています。

太陽の誕生日・冬至
https://bionet.jp/2018/12/28/touji

ヨーロッパのクリスマス

クリスマスも、冬至が起源。


こうした各宗派の行事を取り込んで、自分たちのものにしてしまうのが、実は日本の強みなのだ、というと、お菓子屋さんやおもちゃ屋さんを持ち上げすぎでしょうかね…

こうして日本ではすっかりなじんでいるバレンタインデーですが、毎年この時期になると、ネットでは「バレンタイン禁止のお知らせ」「特定菓子贈与禁止法案」などのネタが流通します。
しかし、これが本当に行われている国があります。サウジアラビアは、イスラムの教えに反するものとして、バレンタインデーに赤いバラなどを送ることを禁止、摘発を行った、という報道がありました。こうしてみると、やはりバレンタインデーというのは宗教行事なのだと実感できますが、むしろ敬虔なムスリムが多いとされているサウジアラビアにも、こうした風習が入り込んでいることに驚きを覚えます。

「自分ち」の記念日を大事にしよう

家族の記念日
バレンタインデーやクリスマスのように、世の中が騒いでくれると忘れることがありませんが、とかく結婚して年数が経過した夫婦などでは、お互いの誕生日や結婚記念日といった、自分たちにとって大事な日、というのを忘れてしまうことがあるようです。
住まいの上棟式や、引渡しの日など、住まいに関わる記念日も、たくさんあります。世の中の喧騒とは別に、こうした記念日をそっと祝えることは、とても幸せなことだと思うのです。
バレンタインデーにチョコレートをあげた人も、もらった人も、どちらでもない人も、「自分ち」の記念日も大切にしよう!

融通無碍:特定のことにとらわれたり、こだわったりすることがなく、自由でのびのびとしていること。