森里海から「あののぉ」
第6回
讃岐の鏝絵
県外からのお客さんと車に同乗して讃岐平野を走っていると、よく言われるのは「おむすびのような山が多いですね」と「立派な入母屋のお家が多いですね」ということ。そして「その立派な家の矢切の部分等にある青い線状の模様は何ですか?」と言う質問です。
このよく質問される白や青の線状の模様は、「讃岐の鏝絵」と呼ばれるものです。左官職が漆喰に色粉を混ぜて鏝を使って模様を描いているのです。私たち香川県人はあちこちでこうした家を見る事が多いので、殆どの人は特別疑問を持つこともないのではないかと思います。しかし、これがどう言う謂われがあるのかを知っている人は意外に少ないのが現状なのではないでしょうか。かくいう私もこれまで特別興味を持つことがなかったので、数年前までどういう意味があるのかを知りませんでした。県外からの客人に何度かこの鏝絵の意味を質問され、調べてみたところ、どうやら「火事避け」の意味があると言うことがわかってきました。青と白の漆喰で描かれた模様は波の模様などの水を表現したもので、火が発生しないようにとの願いを込めているのだそうです。
この青い線状の鏝絵は最もオーソドックスなものですが、他に鯉のぼりや打出の小槌などを外壁の出隅の部分に立体的に描いている場合もよく見かけます。きっと子供達の成長やお金持ちになれるようにという願いを込めて描かれているのでしょう。讃岐平野にちりばめられた左官芸術「鏝絵」。点在するいろいろな鏝絵を探して廻るのも乙な「讃岐路の旅」かも知れません・・・。
※ 本連載は、菅組が発行する季刊誌『あののぉ』で著者が連載している内容を転載しています。