色、いろいろの七十二候

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地始凍・焚火

焚火
こよみの色

二十四節気

りっとう

立冬
黄蘗色きはだいろ #FEF263

ミカン科のキハダの樹皮で染めた、鮮やかな黄色。その歴史は奈良時代に遡る色。。

七十二候

ちはじめてこおる

地始凍
藁色わらいろ #D5C752

乾燥させた稲わらのやさしいくすんだ黄色。似た色に英名のストローイエローから明治以降に訳された麦藁色がある。
働く前の体をあぶる大焚火
  富田直路

ひと昔、いやふた昔前は、いろんなところで焚火をしていました。冬場に外で働く人には、焚火の暖かさは、特にありがたいものでした。

野焼きは、廃棄物をどんどん燃やして有毒ガスが出ることなどが指摘され、規制されてきましたが、家庭で行う小規模な焚火は、野焼きとは区別されていますから、絶対出来ない、というわけではありません。条件が許せば、焚火はほんとうに愉しいイベントです。

けれど、安易に火をおこそうとしてはいけません。焚火には準備もいるし、知恵もいります。

まず、どこでやるか、という場所選び。周りに燃えやすいものがあるところを避けるのは当然です。地面の湿気で火がつきにくいこともありますから、少し掘って、落葉を敷き詰めてあげるとよりよい。

そして、燃やすもの。薪を購入して燃やす、という方法もありますが、古式ゆかしく落ち葉焚きをするのなら、落葉だけでなく、枯れ枝なども一緒に集めましょう。落ち葉や枯れ枝は、乾燥していれば着火しやすいのですが、半面すぐに燃えひろがって飛んでいってしまうので、少し太い枝があれば尚のことよろしいです。着火剤をつかえば簡単? まあ、それはそうですが、様式美というものもありますので…。

焚火には、風を読み、利用する技術も必要です。
風が強すぎるときは延焼などの危険がありますから、焚火を行わない、という決断も必要です。いっぽうで、火をおこすとき、消えかかった火をよみがえらせるときには、火吹きが必要です。うちわを使ったり、吹子だったり。うちわは燃えてしまうこともあるから、竹の吹子があるとよいですね。

そして重要なのは、消火の術を持っておくこと。時間がたつと消えるとか、踏んだり、上から土を掛けて消したり、という人もおりますが、熾火は意外と消えません。消火用の水を用意しておくのが一番です。

ものぐさの熊手にうつれ焚火の火
  石川桂郎
焚火には即かず離れずして遊ぶ
  後藤夜半

火という、危険なものを扱う故の、焚火での知恵。毎回同じようにはいきませんから、そこが知恵の見せ所、面白いところです。

さて、焚火といえばやきいも。焚火でつくるやきいもは、どうしておいしいのでしょうか。
サツマイモの主成分はでんぷんです。このでんぷんが熱せられると、マルトースという麦芽糖が生成されます。これは、サツマイモに含まれているアミラーゼという酵素の働きによるものです。

この酵素が一番働く温度帯が、60度前後です。熾火になった焚火にサツマイモを放り込んでおくと、ゆっくりちょうどよく熱が伝わって、マルトースが生成されて甘味が増します。蒸かしいもも、甘くなりますが、やきいものそれにはどうも一歩譲る気がします。これは、やきいもは水分も適度に抜けることや、酵素が反応する温度帯にある時間が長いことが原因のようです。

電子レンジ加熱では、一気に熱せられてしまうので、この甘味が出ません。焚火にいもを放り込む、という単純な手法ですが、温度が高すぎても低すぎても、そして時間が足りなくても甘味を引き出すことは出来ないのです。

現代は、ガスやIHヒーターが完備されました。料理器具も電子制御されて、ずいぶんと上手に仕上がって失敗も少ない、というものばかりです。やきいもも、スーパーマーケットで売っています。火がなくても生活が出来るようになりましたし、料理もしかりです。

家事労働、というとネガティブに聞こえますが、ホビーである、と考えればとたんに愉しくなりますし、そんな愉しいことを機械に奪われるのはもったいない、悔しいとさえ思えます。

ハイテク製品の恩恵もありがたいものですが、飽きずにずっと愉しめる、という点では、「火」という原始的なものにかなうものは、そうそうありません。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年11月07日の過去記事より再掲載)