おひさまと二十四節気
Vol.5 清明・ツバメがやってくる
清明は、「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれるなり」と暦便覧にあります。
清浄明潔とは、字面からしても、なんともすがすがしい言葉ですね。ちょっと美しすぎるぐらい。
七十二候は、
初候・玄鳥至(つばめきたる)
次候・鴻雁北(こうがんかえる)
末候・虹始見(にじはじめてあらわる)
で構成されています。やっぱりどれもすがしがしい。
祖父江さんのイラストは、初侯にもある「ツバメ」です。
夏鳥で、今頃からよく姿を見るようになり、巣づくりをはじめます。
祖父江さんの絵のように、駅や高速道路のトイレなどに、ツバメが巣を作っているのをよく見かけます。
巣立ったツバメは一体どこに行っちゃうのだろう、と思って調べてみると、台湾やフィリピンで冬を越していることが多いようです。
冬は、日本は寒いし、何より餌になる虫が減りますからね。
台湾やフィリピンなどの暖かなところで潤沢な食事をとって冬を越し、夏は日本で食事をしながら子作りもする。
なんて書くと、人間だったらなんだかちょっとアレだな、と思いますけれど、ツバメ界ではこれが正常モードです。
ただ、昨今では、日本で越冬するツバメもいるようです。日本全体が暖かくなってきていることのあらわれなのでしょうか。
ツバメの立場に立ってみれば、暖かくなれば、食糧になる虫が出てくるし、だったら遠いところまで飛んでいかなくても、日本で冬を越したくなる気もわからないではありません。
でも、そうやって日本がどんどん暖かくなっていくって、本当は怖いことですよね。
気温が上がるメカニズムは複雑ですが、すごく大雑把にいうと、おひさまから届いた熱で地面や海があたためられて、その熱で空気の温度が上がる仕組みです。
空気がいきなり太陽の熱であたためられているんじゃないんです。
この連載で何度か触れているように、季節によって太陽の高度や、日照時間が変わります。
もし、空気が、太陽から届いた熱ですぐにあたためられるなら、一番気温が高くなるのは夏至の時期(6月下旬)、一番低くなるのは冬至の時期(12月下旬)であるはずですが、実際には、暑いのは8月や9月、寒いのは1月から2月、というところが多いですよね。
太陽の活動と、気温のピークがズレるわけは、一度地面や海をあたためて(蓄熱されて)、そこから放射される熱で空気が温まるからです。
海(水)は、熱容量が大きいので、大量の蓄熱をしています。とはいえ中には温度差があって、その温度差によって海流が生まれます。
ただ、いくら海が熱容量が大きいといっても、本来自然にあたためられる以上の熱を加えると、台風の異常発生などの気象災害が発生します。
この、本来あたためられる以上にあたたまるのが、「地球温暖化」です。
「温室効果ガス」によって、本来なら、入ってきた分、夜には出ていくはずの太陽からの熱に加え、人間活動で出た熱も地球上にとどまってしまうので、あたたまってしまう、というわけですね。
日本では、温暖化が進めばツバメが通年見られるかもしれませんが、台湾の人からみると、温暖化が進むとツバメがいなくなってしまうかもしれない。
やっぱりこれは由々しきことです。日本にずっといてくれるならいい、ってもんじゃないですよね。
レイチェル・カーソンは、農薬によって虫がいなくなり、それを食べる鳥もいなくなってしまった、虫も鳥も鳴かない静かな春を、『沈黙の春』で綴りました。
農薬の問題も依然としてあります。しかし、温暖化によっても「沈黙の春」が来てしまうかもしれません。
そんなの嫌だ!
だったら、まずは自分が温室効果ガスをできるだけ出さない暮らしをしなくちゃね。小さなことができない人に大きなことはできない。