おひさまと二十四節気

Vol.13  立秋・ヒグラシ

カナカナの声を聞くと、今年の夏ももう終わりだなぁとしんみりします。
(画・祖父江ヒロコ)

連日の猛暑が伝えられていますが、暦の上では今日から秋。
気温は確かに高いものの、生き物はやっぱり季節の変化を見せています。

僕が暮らす浜松では、セミの鳴き声というと、いつの間にかクマゼミのそれがすっかり主流になっています。

クマゼミは、もともと西日本に分布していたセミですが、だんだんと北上してきていて、今は北関東でも生息が確認されています。

温暖化が原因なのかわかりませんが、何らかの形で人が生息域を拡大していることは間違いないようです。

クマゼミの、「シャシャシャ…」という鳴き声は、より一層暑さを感じさせるものですが、ヒグラシの「カナカナカナカナ…」という鳴き声は、朝夕などに聞こえてくることもあって、夏から秋に切り替わる合図のようにも聞こえます。

身の回りでも、少しずつヒグラシの声が聞こえるようですが、まだまだクマゼミが頑張っています。

国連のグテーレス事務総長は、この7月は観測史上最も暑かったとして「地球沸騰化」の時代がやってきたと発言した、と報じられています。

僕は割と言葉にうるさいので、その報道を聞いた時に、沸騰なわけねえだろ、と思いました。

もともとは
「global warming」が終わり「global boiling」がやってきた、という話だったようです。

boilingというのは、沸騰を指すこともありますが、warmingと対にして、気象のことを話すのであれば、沸騰ではなく、とても暑い、という意味で使ったはずです。

沸騰というのは液体が沸点に達し、表面だけでなく内部からも気化することですから、少なくとも気温を表現するのには全く適した言葉ではありません。

日本のメディアは「沸騰化」という、科学的に不正確な、でもインパクトのある言葉で騒ぎ立てていますが、そういう時にこそインテリジェンスを発揮してもらいたいものです。

ただ、それぐらい暑くなってきた、というイメージはうまく表しているのかもしれません。

温暖化とヒートアイランドは、これもまた別の現象ではありますが、少なくとも、都市部のヒートアイランドについては、コロナ禍で外出自粛、経済活動が停滞していた頃は抑制されていたことが観測されています。

つまり、都市を暑くしているのは、他ならぬ都市に暮らす私たち人間です。

土中の温度は空気温度よりも安定していると言われます。
土中で数年過ごしたヒグラシが、ぼちぼち秋かな、と地上に出てきたら「何じゃこの暑さは!」というのが昨今でしょうけれど、人の活動でヒートアイランドも抑制できることがわかったのですから、立ち止まって考えることも多いに必要じゃないでしょうかね…。