啓蟄
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けいちつ
土の中で冬籠していた地虫や蟻や蛇や蛙などが穴を出る。「蟄」は土のなかの虫、「啓」はひらくことを意味しています。このころに落ちる雷を虫出しの雷とも呼びます。移動するのは虫だけではなく、人間も進学先が決まったり、勤務地が変わったりで家を出て移動しはじめる時季となりました。仲春のころで、段々とあたたかくなり動きやすい季節になってきたということでもあります。
- 啓蟄や埃をはたく車椅子
- 丸林袖川
菜虫化蝶
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なむしちょうとなる
青虫が羽化して蝶となる。なんとひねりのない七十二候でしょう。これは日本版の独創なのですが、あたりまえの自然描写でおもしろくもなんともありません。ちなみに中国版は鷹化為鳩、鷹が化して鳩となる、です。奇想天外摩訶不思議。このころになると白や黄の小さな蝶を見るようになります。でもよく考えれば菜虫つまり青虫がそのまま蝶になるわけではなく、蛹を経ねばなりますまい。
- 手のとまる蝶おそろしき山路かな
- 星野立子