はじめてのこよみ暮らし
七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録
竜洋昆虫自然観察公園
七十二候は菜虫化蝶となりました。太郎は編集長に、磐田市にある竜洋昆虫自然観察公園へ行こうと持ちかけます。しほがホームページで調べると……
しほ ぎゃあああ!
太郎 編集長、どうしました? 浴室でゴキブリに出くわした時のような声を出して。
しほ 竜洋昆虫自然観察公園の昆虫館、ゴキブリ展やってるって!
太郎 ゴキブリ展。挑発的な企画ですね。おもしろそうです。
しほ 今回は太郎ひとりで行って!
というわけで、ひとりで取材に行くことになった太郎。
太郎 うわっ、保育園だか幼稚園だかのみんなが遠足で来ているんですね。動物園とか昆虫園は子どものアトラクションってイメージが強いですけれど、本当は、社会生活に悩む大人がひとりでぶらりと行って暇をつぶすものだと思うんですけれど……。
太郎 お、ゴキブリ展。強烈です。
ゴキブリ展でリフレッシュした太郎は外の自然観察公園へ出ます。
太郎 いやはや。ゴキブリ展は自然の“圧”でしたね。
太郎 でもゴキブリは人間に一番身近な昆虫。そのゴキブリを嫌がるだけではなく、その生態を知るのも人間がゴキブリとともに暮らすには大事なことなんですよねぇ。
太郎 それにしてもグリーンバナナゴキブリなど緑色のゴキブリがいるのは驚きました。
太郎は自然観察公園のすみに原木が積まれているのを見つけました。
太郎 公園内では、こういう原木が積まれていたり、あるいは太い原木が唐突に置かれていたりします。
太郎 この原木は何のために置かれているんでしょう。もしかしたら原木で昆虫のすみかを作っているのかもしれませんね。ドイツなどではジバチやテントウムシなどの昆虫を増やすために枝や藁やコルクなどで作った「虫ホテル」(insektenhotel:Google画像検索)を家の壁や庭などに設けられるらしいですけれど、それの大掛かりなものでしょう。
太郎は自然観察公園の池にも注目します。
太郎 この池は鳥や昆虫たちの水飲み場であり、そしてトンボなどの幼虫が暮らす場所にもなるんでしょう。ちゃんと考えられて造られています。
田園住居地域という用途地が4月から追加されるということで、「農のある暮らし」が日本でも注目されはじめているけれど、受粉などをして草木を保つためにも、鳥などの餌になるためにも昆虫の存在はなくてはならないんですよね。この昆虫自然観察公園は、人が自然とともに暮らすための、それこそ生物多様性の教科書のようなものです。
自然観察公園には川の流れも造られています。そのほとりに咲いている野草に黄色い小さな蝶がとまっていました。白い小さな蝶も飛んでいます。
太郎 菜虫すなわち青虫が、ちゃんと蝶になって飛び回っています。蝶の可憐さを褒めるのは簡単です。そんな可憐な蝶が育つ環境を維持するのは地味で大変なことで、これから求められ続けることです。
この春、あなたの家の近くで昆虫を見ましたか?
蜂の姉妹や濡れ翅のこすれあふ 林甲太郎