寒露
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かんろ
露は凍ると霜になるけれど、まだ霜にならない寒さ。このごろからだんだん冷えてやや寒、心が落ち着かないうそ寒、皮膚で感じる肌寒、冷気を感じる冷まじ、わけもなく気持ちが早まるそぞろ寒、骨身にまで来る身に入む、露が霜になりそうな露寒と度を増します。寒くなる様を表現する季語が暖かくなる季語より多いのは、人の皮膚の冷たさを感じる感覚点が、暑さを感じる感覚点より表皮に近く、冷感に気づきやすいからでしょうか。
- 冷まじや北へ犇めく夜のレール
- 坊城俊樹
蟋蟀在戸
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きりぎりすとにあり
これ、こおろぎじゃない? 漢字を知る方はこおろぎと読むのではないかと疑うかもしれません。昔はこおろぎときりぎりすが混同されていました。きりぎりすこと、こおろぎは野に鳴く虫です。それが百人一首の「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む/後京極摂政前太政大臣」のように、人家の、それも戸の近くで鳴いているのですからもう鳴きをおしまいにして冬支度、ということでしょうか。人恋しい季節です。
- むざんやな甲の下のきりぎりす
- 松尾芭蕉