ちいきのたより

Vol.109  伝統の技 
岡山県倉敷市 運船建設

ちいきのたより第109回擬洋風「江川式建築」を辿る岡山県倉敷市運船建設

 

ちいきのたより第109回擬洋風「江川式建築」を辿る岡山県倉敷市運船建設

まだまだ茹だるような暑い日が続いていますね。
今回のちいきのたよりは、岡山からお届けいたします。

今年はイレギュラーな事態に振り回され、お盆だって、夏休みだって、いつもと違う状況。そんな中でも、皆さんそれぞれに生活に彩りを添える工夫をされていると思います。
私は元々人混みが苦手なので、休日には蜜にならない身近なスポットへお出掛けして、リフレッシュしています。
つい先日も、ふらっと散歩に出掛けたついでに面白い発見があったのでご紹介したいと思います。


私の住んでいる倉敷市の中心部には、洋風な木造建築の資料館があります。それがこちら、「倉敷市歴史民俗資料館」。
倉敷市歴史民俗資料館

趣のある素敵な外観ですよね。
小学生の頃、夏休みには市営プールで遊んだ後、隣のこの資料館に寄って帰るのがルーティンだったことを思い出します。ノスタルジックな佇まいの建物に足を踏み入れた時の、タイムスリップしたような特別な感覚にウキウキしたものです。
近くまで来たのでなんとなく足が向き、久々に入ってみました。
入館無料
こちらの資料館は、無料で開館しています。
中には、幕末から現代までの教科書や学用品などが展示されています。
手に取って見ることができる資料もあり、時代による教科書の変遷を辿ることができます。


当時は高級品だったに違いない、24色入りの「海の友クレヨン」や、「甲」が並ぶ成績優秀者の通知表、透かし彫りなどの装飾が美しいピアノなど、貴重なものがたくさん展示してありました。

こうした品々を興味深く眺めていると、資料館の管理人さんが、建物にまつわる面白いお話を教えてくださいました。
倉敷幼稚園舎模型
この建物は、大正4年に建てられた倉敷幼稚園舎が移築されて復元、保存されているものです。
設計者は、堂宮大工でもあった「江川三郎八」さん。この建物以外にも、久世の「遷喬(せんきょう)尋常小学校」や、高梁の「吹屋小学校」など、岡山県下に数多くの建築物を残されているそうです。


玄関正面の桜の紋章の上には、巾着袋をかたどった棟飾りがついていますが、これはいわば設計者の遊び心。昔は着物を着て、巾着袋を提げて通学通園していました。江川三郎八さんは、ここが子どもたちの集う学び舎だったからこそ、ユーモラスな巾着の棟飾りをデザインしたのでしょう。
江川三郎八設計幼稚舎八角形の天井
現在展示室になっている、八角形の部屋が元遊戯室。天井が美しい花弁状(八弁花模様)になっています。この他にも随所に独特な意匠が見られるので、隠れた意匠を探してみるのも楽しみ方のひとつだと思います。

この遊戯室の真ん中には、柱がありません。江川三郎八さんは、遊戯室で子供たちが自由に遊びまわれる広い空間を確保するために、天井裏に木組み(トラス構造)を施し、当時としては革新的な技法を使って、心柱がなくても屋根が持つ工法を確立したそうです。

またここで教えてもらったのが、岡山市にも、江川三郎八さん設計の似たような幼稚園園舎が、今も移築して保存されているということ。折角なので、後日そちらにも訪ねてみました。
八角園舎旧旭東幼稚園
こちらは旧旭東幼稚園の園舎で、「八角園舎」と呼ばれています。
明治41年、倉敷幼稚園よりも7年ほど前に建てられたそうです。八角形の遊戯室を有する幼稚園園舎のうち最も古く、国の重要文化財に指定されています。
八角形の園舎八角形の天井
この八角園舎には、真ん中に柱があります。この園舎が建てられた当時には、まだ心柱なしに屋根をもたせる構造は考えられませんでした。そこから7年ほど経て、江川三郎八さんは、柱がなくても屋根がもつ構造を天井の裏に作り上げたのです。
旧旭東幼稚園
こちらの施設では定期的に親子で楽しめるイベントを開催されており、遊戯室や絵本のへやなど、子供たちが楽しめるよう無料で開放されています。
また、展示室には江川三郎八さんの活躍した記録や、八角園舎の歴史を辿った写真など、貴重な資料が展示されています。天井裏のトラス構造についても紹介されていました。

ということで、今回は、岡山県下に「江川式建築」と呼ばれる多くの「擬洋風建築」を残した、江川三郎八さん設計の幼稚園園舎を二箇所ご紹介いたしました。似たような両者を比べてみるというのも、なかなか面白かったです。
建物も魅力的ではありますが、私にとっては出掛ける先々での人との出会いも楽しかったりします。
「倉敷市歴史民俗資料館」で出会った管理人さんとお話しする中で、これまで存在を知らなかった岡山市の「八角園舎」を知ることができ、また、気にかけていなかった建物の構造についても知ることができました。自分の身近なところにも、まだまだ全然知らないところがあるのだなと気づかされました。

それではまた、ちいきのたよりでお会いしましょう。暑い日が続きますが、どうぞご自愛ください。

ほりけいこ
ちいきの記者
ほりけいこ
岡山県倉敷市出身。
休日には、カメラ片手に景色の良いところにお出掛けするのが楽しみです。また、パンやケーキなどグルテン大好き人間ですが、最近では健康と体型を気にして、やや自粛傾向にあります。
いつでも自分らしく、自然体でいることを大切にしています。

 

岡山県倉敷市運船建設施工事例
運船建設(株)うんせんけんせつ
岡山県倉敷市日吉町492-6
TEL:086-422-1143
URL: http://www.unsen.jp
1963年、ひとりの大工が倉敷にて創業してから約半世紀、地元密着型の工務店として家づくりを行っています。不用意に施工棟数を増やすことはせず、確実に仕事を遂行し、お客様と地域の皆様から愛される工務店を目指しています。
なお、社名からよく「船も造っているのですか?」と尋ねられることがありますが、造っているのは家のみです。

ちいきのびお参加工務店さん全国図

ちいきのびお