ちいきのたより

Vol.122  道ばたのちょっと気になる石像 
千葉県柏市 小川工務店

七十二候は「地始凍ちはじめてこおる」。夜中から朝方にかけて寒さが厳しく、大地が凍り始めるころです。

一時期、遠出はおろか、外出まで控えることになったコロナ禍。
主なリフレッシュが近所の散歩になったとき「そういえば…」と思い出したものがあります。

高校生になり自転車通学を始めてから、ふんわりと気になっていた道ばたにある石碑。
お地蔵さんとも形が違うし、お墓や記念碑でもなさそう…。
自転車を止めてまで観察するほど興味はないし、そもそもなんだか怖い。
こんな理由で、見ないふりをして数十年が経ちました。
散歩するくらいしか外に出られず、無理やり地元に目を向けさせられた少し前、長年の疑問を解消する個人的自由研究をしてみました。

さぁ、怪しげな石碑巡りのスタートです。

1件目は交通量の多い国道沿いにある石碑群。
ズラッと規則正しく並んでいる様は、周辺の景色に一切溶け込むことなくどこか異質な空気を放っています。
うーん、やっぱり怪しい…。
掲げてある案内文によると石碑の名前は「庚申塔こうしんとう」。
案内板とGoogle検索による解説はこんな感じです。

庚申こうしん
60日に1度の庚申かのえさるの日、睡眠後、人間の体内に住むさんしという虫が天に昇り、天帝に日ごろの行いを報告するといわれる道教の教え。この告げ口により、大きい過ちは300日、小さい過ちで3日、命を縮めると言われる。庚申の夜に、虫が抜け出せないよう徹夜で宴会などをした風習を庚申講といい、江戸時代には庶民にまで定着。この集会を3年18回続けた記念に建立した石塔を庚申塔という。

怪しいものでも怖いものでもなく、庚申信仰をした庶民が建てた像だということが分かりました。
良く見てみると彫られているモチーフは、精巧で高尚な佇まいというより、ユーモラスで親しみやすい雰囲気を醸し出しています。

庚申塔

雨風にさらされ、図柄が読取りづらいものの、上のものは病魔・病鬼を払うと言われる青面金剛しょうめんこんごうということ。

あのー、とても言いづらくはありますが自分で彫れそうじゃないですか?
ありがたい像に違いないですが、なんだか身近なキャラクター感を感じます。
ほかにはどんなモチーフがあるのか、種類に違いはあるのか。
好奇心を刺激され、次の庚申塔を目指します。

こちら2件目。
青面金剛庚申塔

左から享保13年(1728)、享保18年(1733)、貞享2年(1685)に建立された庚申塔だそうです。
残念ながら、こちらも長い年月で像が削れ、図柄や文字がはっきりとしないものの、庚申信仰の本尊である青面金剛であることがわかります。

もともとは別の場所にあったそうですが、倒れた際こちらの場所に移動されたそう。
ノートに線を描いて遊んだ○✕のように、3✕3の形でコンパクトにまとめられたのは移設されたからでしょうか。管理する人が途切れ、忘れ去られてしまうとその後の保存が難しいのは仕方ないことではありますが、なんだかモヤっとする配置方法です。花受けを見ると、周辺に自生していた花が生けられており、完全に人の手が離れた場所でないことが救いです。

もう少し手入れされている保存状態の良い像にも出会ってみたい。
そんな思いで向かった、3件目。
お寺の入り口の庚申塔
お寺の入口に厳しい表情の庚申塔を見つけました。

庚申塔の下には小さな鬼のモチーフ
正徳3年(1713年)の、細かい表情まで読み取ることのできる青面金剛です。
腕は6本、それぞれの手には、刀や弓、矢を持ち、うつぶせの邪鬼を踏みつぶしています。(鬼の体型が丸っこくてかわいいと感じるのは私だけでしょうか)
資料によると脇には左右それぞれにニワトリが彫られていることが多いようですが、こちらの像は手足があるため童子でしょうか。その下には「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿も見ることができます。
それぞれ迫力のある表情をしていますが、拡大してみると、やはりユーモラスなかわいらしさを感じます。
厳しい表情を見ると、今まさに体内を抜け出そうとする虫を強く押し留めてくれそうです。

最後にもう一つ、じっくり見てみたいと目を付けていた庚申塔があります。

三叉路の真ん中の庚申塔

三叉路の真ん中に突然あらわる庚申塔。
舗装された道路のなか、小島のような空間だけがタイムスリップしたように感じられる場所です。
抜け道になっているこの場所は車の往来が多く、中に立ち入るとものすごく目立ちます。また、普段はヒールを履いているため、柔らかそうな土に踏み込む勇気が持てなかったのも今まで観察できなかった理由です。
今日は好きなだけ観察しようと人の少ない、日曜の朝8時に到着。
足元はもちろんスニーカー装備です!

左上から元禄10年(1697)、宝永4年(1707)、享保7年(1722)、昭和61年(1986)に建てられたもの。
同じ青面金剛でも彫刻がシンプルなものから凝っているものまで色々。
見栄えは全く違いますが、いずれも手に様々な法具を持ち、足で鬼を踏みつけ、三猿の上に立っています。
元禄10年のものに関しては、身長と頭の比率がまるでアニメのよう。
このままキーホルダーにして、手元に残したいゆるキャラ風味です。(最近のガチャでありそう)
2番目の庚申塔が建立された宝永4年は、富士山の大噴火があった年だそうです。

驚いたのは、昭和61年に建てられた歴史の浅すぎる庚申塔があったこと。
庚申塔には「○○安兵衛」「○○庄之助」など、建てた人の氏名が記載されていますが、昭和61年のものには「○老人クラブ」とありました。
元禄、宝永、享保という時代に実感が沸かず、物語のように感じていたところに、急に馴染みのある「昭和」と「老人クラブ」の文字。忘れられた庚申塔があるなか、ここが地域に長く大切にされ、愛されてきた場所だからこそ感じる統一感のなさに、歴史のロマンを感じます。

長寿を願い建てられた庚申塔は、その後の土地開発により本来の場所から移動されたものが多いそうです。その事実はさみしくもありますが、庚申信仰の主役が「生活を営む普通の人々」であった以上、利便性を求め変化することは当然であり、必然です。

コロナ流行により、マスク装着やソーシャルディスタンスなど新しい生活様式が定着した今、私たちの暮らしも大きく変わりました。住まいに関しても、玄関脇に設置する洗面台が販売されるなど今までにはなかった新しいアプローチが始まっています。

暮らし方は住まい方を変えていきます。

さまざまなものが変化し続ける中、唯一変わらないもの。
それはどんな新しいものや考え方、商品が増えたとしても「人が主役」であるということだと思います。
千葉県柏市は東京都のベッドタウンということもあり、コロナが終息に向かっているとはいえ、仕事がしづらい現状は変わりません。けれど、「本当の主役」に寄り添い、日々目的を見失わず住まいづくりを実直に進めていくこと。今も昔もそれだけがわが社のできるすべてです。はるか昔から今に残る庚申塔を辿りながら、そんな今やるべき当たり前のことをしみじみと感じて終わった個人的自由研究でした。

古賀知加子
ちいきの記者
古賀知加子こが・ちかこ
工務店に入社して10年余り。こんなに長くいるつもりもなかったのに、楽しみながら仕事をしていたらこんなに時間が過ぎていました。
会社内では広報をはじめ受付、経理や総務など何でも屋。領収書紛失は許しません!(笑)
お客様に最初に接することになるので、明るく気持ちのいい対応を心掛けています。

 

千葉県柏市 小川工務店施工事例
(株)小川工務店おがわこうむてん
千葉県柏市新逆井2-9-17
TEL:04-7174-4102
URL:https://www.ogawa-bco.co.jp
「より良い住まいづくり 豊かな暮らしのお手伝い」をモットーに、お客様のニーズに合わせた新築住宅・リフォーム・リノベーション工事を行っています。
安全・安心・快適・健康・幸福な住まいと暮らし実現に向け、工事終了後も「住まいと暮らし生涯点検」を行い、住まいのホームドクターとしてお役に立てるよう、社員一同努力しています。

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