まちの中の建築スケッチ

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明治学院大学記念館
——明治時代のネオゴシック建築——

明治学院大学記念館

1年少し前にスケッチをした、高輪消防署二本榎出張所のある高輪台の尾根道から直角に、国道1号線の方へ、緩い坂道を下り交差点を渡ると、明治学院大学の白金キャンパスが広がる。
広いローンの正面にある記念館は大学初期の建物。少し高いところにあって国道を車で走っていても目に付く。1890年創建の元は煉瓦造2階建てのネオゴシック様式だが、1894年の明治東京地震で被災し、2階は木造で改修されたとある。さらに、1964年の国道1号線の拡幅で曳家されて今の場所に建つという。歴史資料館展示もされているというが、あいにくコロナ感染対策で臨時休館、守衛さんに尋ねたが、キャンパスに足を入れることもできなかった。
交差点には、歩道橋がかかり、無ければ全景が見られるのにせっかくの景観を損ねている。ところが記念館をスケッチするには、幸い歩道橋から良く眺めることができた。記念館の左手には、大正年間に建てられた、ヴォーリズ設計のチャペルがあり、オランダ職人作のオルガンも設置されているというが、これもまたの機会に訪れたい。国道沿いには、内井昭藏設計の本館が、並んでいるが、記念館を意識した景観の構成になっている。
国道の両側には、ここ10年くらいの間に、100mを超えるタワー・マンションが2棟、3棟と建てられていて、空に突き出ているが、大学キャンパスには緑も多く、複数の歴史的建造物を残し、外から眺めても気持ちよい空間である。
ローン手前の塀に、4000㎡の校舎の建築計画の掲示が出ていたが、緑地景観が保全されるように祈りたい。最近の都内の大学の建物は、どこも超高層が建ち、まるで巨大オフィスの様相を呈している。お茶の水は、日大も、明治大も、競う様にタワービルディングが建つ。飯田橋の法政も新宿の工学院も同様。東京大学ですら安田講堂裏には理学部棟のモダン建築が目立っている。どうもアカデミックな空間を感じさせない。明治学院大学白金キャンパスは、内井昭藏が16年かけてアカデミックな空間構成を追及したと言われる。次に訪れるときは、キャンパス内を巡りたい。


神田さんの新著『小さな声からはじまる建築思想』が出版されました。

書誌情報より
建物の耐震性や構造安全性の専門家として名高い著者は、建築の世界を志して以来、一貫してスクラップアンドビルドではなくストックを活用するまちづくりを提唱し続けてきた。
本書の特徴の一つとして、著者の言葉の端々に「一人ひとりの生活への想像力」が滲んでいることが挙げられる。そのような姿勢は、一体どのように涵養されてきたのだろうか?
転機となった東大闘争、世界的な経済学者・宇沢弘文氏が唱えた「社会的共通資本」の理論が神田氏の建築思想に与えた影響などにも迫る。東日本大震災の発生直後から関わる三陸復興のプロジェクトを通して得た豊富な知見も収録!

小さな声からはじまる建築思想

発行/現代書館
四六変型 184ページ
定価 1700円+税
ISBN978-4-7684-5894-5

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