工務店女子が伝えたい家づくり

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「買い物は投票」
私たちの行動が社会を動かす

新年を迎え2022年となりましたが、家づくりをお考えの方から建設業全般の今一番の悩みといえば、材木はもちろんのことあらゆる建材の品不足、そして値上げのことではないでしょうか。
ウッドショック・建材ショックについては今年も続くと思われるため、ここでお話ししておくべきことではないかと思ったので話題にします。

小規模の工務店は特にですが、使用する建材を在庫として抱えるほどの資金力もないため商社をバックにもつ大手住宅メーカーに比べて変化の対応に追われているようです。また、その中でも内部造作などを都度製作・都度発注しオリジナル性を持たせている所は特に市場の影響を受けやすいです。

構造材や木材などに関して地域工務店によっては、今までの地道に丁寧にお取引をしてきた実績からなんとか手に入れられるような状況ですが、これもいつまで続けられるのかは分からない状況となってきましたし、さすがに値段は上がってきています。

もとは、新型コロナウイルスがきっかけで海外の内需の拡大や輸送が円滑に行われなくなったことによる木材等の日本への輸入量の減少などの影響で起こった値上がりですが、現在は合板、アルミ・樹脂サッシ・ガラス、石膏ボード、グラスウール断熱材など数%ではなく数十%値上げもざらです。
確かに、今まで原材料や石油などを使う輸送費が上がっても値上げをせずに頑張って支えてきてくれたメーカーや販売先も多かったと思います。
現在では半導体や世界中で部品が不足して生産ストップしている製品も増えてきましたし、その上追い打ちを掛けるように世界各地で起きる自然災害です。豪雨や山火事などが影響して、羽柄材とよばれる下地材などに使う材木も手に入りにくくなっています。本当に世界中が混乱している気がします。2022年には落ち着くと思っていたのですが、今では長引かないと良いと願うばかりです。

ここまでは、もうすでに起きてしまった事実でしかありません。

私が思うのは、いまこういう状況となったことで「ものを作る時や買う時に消費する側として一歩踏み込んで考える」ことをしていきたいということです。

具体的に、私がものを購入する時に考えることは

①誰が作ったものか(製造元と販売先)
②原材料は何か(材料の素材や採取したところも含めて)
③いつからあるのか、どんな背景で生まれたものか
④使う事で影響を受ける人・環境はあるか

例えば日用品で言うと洗剤などは皆さん必ず買ったことがあると思うのですが、

①どこの国で作られているのか? そこでしか作ることができないのか?
②材料を手に入れるために環境破壊や負荷をかけていないか?また使うことで作り手を応援することができるか?
③誰が考えたもので使う人の為思って作られたものかどうか?
④使うことで環境負荷が多大ではないか? 自分が支払ったお金は適切に作り手に渡るものかどうか?

ということが、頭をよぎります。私の周囲にも脱プラスチック(できるだけラップを使わず洗って繰り返し蓋のできる容器を使ったりする)を実践しているかたや、洗濯洗剤・食器洗剤なども排水した後の環境への負荷ができるだけ少ないものを使用する方は少なくありません。

でも、家という大きな買い物になるととたんに思考が停止する方も、また少なくはありません。会社の大小に限らず家づくりの背景に起こる循環について考えている所を選択するのは簡単ではないけれど、きっと話を進めていけばその思いというのは必ず見つけられると思います

「物を買うのなら安い方が良いに決まっている」

それは確かにその通りなのですが、大量生産・大量消費を促すことで利益を生もうとすると、結果的に仕入れを安くすることなど原価をいかに下げるかが大切になってきます。消費する側が何も考えず値段でしか物を判断しなくなるとどうなるのか。

工務店でいうと、材木や建材などの仕入れを少しでも安く手に入れる、工期はとにかく短くする、少しでも安く工事をしてくれる業者に依頼するということで、請負工事価格や販売価格を抑えるような他社との価格競争に陥ります。
2021年のウッドショックが始まった時、たくさんの住宅会社が急に「SDGs」と言い出し国産材の使用のアピール合戦を始めたように感じました。でもその裏側は、単に安い輸入建材が手に入らない、もしくは国産材の方が値段が安くなったから買っているだけじゃないの? アメリカやカナダをはじめとする輸出先では、今まで日本が買っていた金額より自国で高く売れるようになったものだから、わざわざ安い値段で日本に売る必要がなくなった。買いたければもっと高い値段でしか売らないと今まで通り購入ができなくなってしまいました。
国産材が沢山使用されることには賛成だけれど、近年では人手不足・資金不足となってしまった林業の方たちがせっかく今まで頑張って継続してきたことを無駄にしてはいけない。確かに日本には植林された木はたくさん余っているそうです。だから、林業をまた元気にして人手を増やし設備を充実させることができたらきっと日本の山も良くなると思います。でも、ここでもともと輸入建材を使用していた人たちが、国産材の方が高くなった時にもずっと国産材を使いつづけてくれるかどうか? 木の供給側も沢山出荷できるように設備投資をしたところで、数年後に売上が落ちたら今度こそ廃業・衰退してしまいます。
ここまで読んでいただくとお分かりかと思いますが、これって世の中の経済ではよくあることです。国産で大切に育てられた野菜や果物が、安い海外のものが出回ることで売れなくなり、十分な収入が得られず農業の担い手が減っている。

ものを安定的に安く手に入れるために海外から仕入れることが必ずしも悪ではないと私も思います。でも、私は一つの判断基準として日本で育てられたものや日本で昔から当たり前にあったものを使うことを大切にしてみようと思っています。

家で例えると、瓦・畳・左官さんの塗壁・障子や板戸。
何十年というレベルで経年美化していくものは特に好きです。
でも、これお値段は工業製品より高くなることが多く、私の住む三河地方は日本三大瓦の産地でしたが、去年までにたくさん廃業した瓦屋さんを見ました。代わりに多く出回っているのは、瓦に比べ大量につくることができる安価なもの。でもそいういうものは比較的耐久性の低いものが多いです。古くなったら壊して捨てるというのは結果的にお金も余分にかかる。だからできるだけ初期投資をして長く使うことで節約に繋げていけると思います。

また、同じ日本にいて不思議に思うことがありました。ニュースで時々話題になる牛乳やバターが手に入らなかったり、原材料や輸送費加算で値上がりして悲鳴をあげていますが、北海道に旅行に行ったときにはそれはたくさん美味しそうな牛乳やバターがとてもお安く売られていました。
あれ? 今って乳製品不足じゃないんですか? と聞きましたが、そちらでは逆に余るぐらいあるそうです。なんてもったいない!!
わたし、ものすごく驚いたんです。知らなかったことした。北海道で作られたものが本土(と言っていいのか分かりませんが、本州)に持って行って売ることができないとその方は言っていました。一国民として謎にしか思いませんでした。
経済を上手く運ぶには国際関係など色々とあるのもわかりますが、もっと素直に日本の中でお金を回せないのかなと、つくづく思います。

とはいえ私個人には大きく国を動かすことはできないけれど、何かを消費する時、もちろん家を建てる時も自分のお金がどこでどんな風に使われるのか、どんな人たちに支払われてその人たちが使うことで、この先の自分たちの未来が良くなるのかそうでなくなるのか。少なくとも日本の会社や人に支払った代金は日本で税金として支払われたり、私のような地方だったら愛知県だったり西尾市だったり身近なところで循環させることで、自治体が豊かになれば私たちや家族や子供たちに還ってきたりもします。日本には風が吹けば桶屋が儲かるという諺がありますしバタフライエフェクトという言葉も聞いたことがあると思います。自分の起こした行動が周りを動かす力を秘めていることは意識していただけたらと思います。

自分の小さな考えひとつにも「価値」を付けて物を見ることができるようにしていく、そんな未来を作っていけたらと思って今年一番目のお話しとさせていただきます。

著者について

石原智葉

石原智葉いしはらともよ
工務店女子
愛知県西尾市生まれ。釣りが好き。月を見るのが好き。地元食材や、地元で作られたものが好き。 シンプルな暮らしにあこがれる。これは、まだ実戦途中。 設計の仕事では、お客様のプライベートにぐっと入り込んでお話しします。たくさん考えて出した答えは後悔することが少ないので、満足できる家づくりに繋がります。お互いに信頼しあい、人間関係を築くことも家づくりに携わる上で大事な使命だと考えています。
イシハラスタイルにて、家づくりの仕事をしています。

連載について

自然素材を使った家。 日々の住まいのメンテナンス。 工務店にとっては当たり前のことも、大手メーカーにはできなかったりします。 リノベーションも、工務店の力の発揮どころ。 けれど、そんな事実が伝わらず、家はどれも同じ、とばかりに建てて(買って)しまう人がとても多いです。 スクラップ&ビルドはやめて、地元の工務店・職人に家づくりをお願いしたら、どんなことが起こるのか。 工務店女子・石原智葉さんの「伝えたい」という気持ちにあふれる声をお聞きください。