まちの中の建築スケッチ

54

赤坂プリンスクラシックハウス
——ビル群の中の洋館——

赤坂プリンスクラシックハウス

地下鉄銀座線の新橋から赤坂見附までは高校時代に毎日通っていた区間であり、赤坂見附の駅を通ること自体が懐かしい。地下鉄そのものや駅構内は明るくきれいになったし、永田町が乗換駅で、複数の地下鉄の駅に地下連絡通路が巡っており、変わったといえば変わった。駅を出ると以前にもまして大きなビルがそびえるまちになっているが、あたりは都内でも比較的よく訪れる場所である。
ホテルニューオータニも、赤坂プリンスホテルも、最新設備の超高層ホテルを建てて足元に広場は計画されているものの、結果的に緑地が少しずつ減っているのは実に残念なことである。以前、ニューオータニガーデンコート(超高層オフィスビル)が計画されたときに、法律と技術と周辺の了解があれば建ててよいのかと、緑地が減り景観がそこなわれることに対しての問題提起をしたことも思い出す。そのときの都の担当者は、赤坂プリンスホテルのこともあまり快く思っていなかったようで、応援気味に対応してくれた。その赤坂プリンスホテルも今はなく、下層がオフィス、上層がホテルのザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町に生まれ変わっている。景観の議論が乏しくなってしまっていると感じる。
ただし、元旧館と呼ばれたクラシックハウスは、裏手にあたるプリンス通りに面していて、超高層ビルに囲まれながらも、ゆったりした広場とともに落ち着いた空間を維持しているのが嬉しい。このあたりは、国会議事堂にも近く、議員のパーティなども開催されることがあって、建築基本法制定に取り組んでくれている議員のパーティに参加する度によく通るところである。時には、スケッチをしている人も見かける。
建物は、1930年に旧李王家の東京邸として設計され、1955年からホテルとして使われ、2016年には曳家と大規模改修を経て今日に至っている。何度かパーティに呼ばれて利用したこともある。何となく大きな屋根のプロポーションを改めて見ると韓国風なイメージを感じないでもない。都内のホテルは、1964年の東京オリンピックを機に高級ホテルが大規模化し、最近また2020年のオリンピックを目指して似た状況が生まれたようにも思う。大規模というと超高層ビルということになるが、最近は、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町のように、オフィスとホテルのセットで計画される場合が多い。
まわりがビルに囲まれた中にあって、2階建てで頑張っている。ほぼ正面の道路からのスケッチである。背景には、ザ・プリンスギャラリーが立ちはだかっているが、右手にニューオータニガーデンタワー(ホテル)と、左手には鹿島建設のビルがちらりと見える。花壇や生垣が低いのも、道を歩いていても建物がよく見えるので良い。まさに景観としてこれからも大切に扱ってもらえることを期待する。

著者について

神田順

神田順かんだじゅん
1947年岐阜県生まれ。東京大学建築学科大学院修士修了。エディンバラ大学PhD取得。竹中工務店にて構造設計の実務経験の後、1980年より東京大学工学部助教授のち教授。1999年より新領域創成科学研究科社会文化環境学教授。2012年より日本大学理工学部建築学科教授。著書に『安全な建物とは何か』(技術評論社)、『建築構造計画概論』(共立出版)など。