よいまち、よいいえ

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東京都江戸川区船堀・新川

東京都江戸川区船堀・新川

歴史的運河環境の復活整備

いろいろ道をさまよい、旧五街道や東京の川も歩き回って、
探りあたった発見のよろこびがこの道、この復活させた運河沿いにあった。

それまでは、困惑とともに切ない思いをした例も多く、
例えば峠道の途中、高速道路が里の集落の頭上高くに設けられ、
耐久性などの安全への不安とともに、地域を分断している姿も見た。

高い堤防整備で水の流れは遠ざけた下に、
あるいは蓋かけされた状態などはよく見かけるが、
東京の環状7号線道路下などでは大規模な地下貯水構造も造られている。
整備費や維持費の心配もさることながら、
車を上、水を下にする逆さとも思える在り方にも疑問を抱くだろう。

それに対し、この歴史的運河の環境再生には、
一般化している自動車や一時的な金を優先する
環境の在り方に対する挑戦が感じられた。
環境の問題になる車は地下に、
そして地上は水沿いの自然環境の再生とともに、
千本桜の整備、そして、歴史的風情を造ろうとした歩行者橋や
拠点の整備などがなされ、再現した運河では、催しや花見の季節に木造船を航行させている。

不遇をチャンスヘ

そもそもの道と水は?

実際に街や道を歩きまわると、前もって調べたことや想像とはおおよそ違ったことばかりだ。よく使っている道も、観察するつもりで歩くといかに見ていなかったということに気づかされる。思わぬ出会いもあって、道が如何にあるかでも違ってくる。「道をきわめる」「○○道」など、「道」は我々がどう生きるかにもつながっているのだろう。しかし、工業化社会になって、自動車が横行し、文化や人の和をつなぐはずの道や街は、むしろ関係を断ち切ることになっているのではなかろうか。一方、道を歩けば必ず橋や水にも出あう。水は、生き物の命の源で、生きるための飲み水のみならず身近になければ豊かではないのだろう。便利に、経済的になったが、かつての工場は地下水を汲み上げ地盤沈下をおこし、水を汚し、温暖化にともなう異常気象にもつながり、水害対策はより高い堤防になって、水から遠ざけられた。家先の流れも、車の出入りで蓋をかけられ、様々なところで水の環境は隠され、おろそかにされてきた。
これからを問う年の初めであり、道と水を、歩む道の始点、海や水とつながり水運で栄えた歴史や道路原標がある日本橋から明日を占ってみよう。

逆さ状態への長年の怨念?

私事を申せば、土日の昼に水辺の環境復権を訴える展示ライブ活動を日本橋のたもとで始めてからもう12年になる。干支もひとまわりしたが、まだ続けなければと思っている。活動の狙いは、3.11の経験から沿岸地域のこれからへの提案とともに、なかなか問題解決に事業化できない高架道路に関する解決策を往来の方々に問いかけることにある。
そもそもの問題意識は、昭和の東京オリンピックで急遽造られてしまった中学生の頃からにもあったが、大学院生の頃、日本橋や周辺の各時代の姿を資料から絵におこして、問いかけの図や文にした。その後経験や時を経て、1997年、行政からの委託でこの周辺地区の地区計画案作成とともに、日本橋川に架かる高架道路の問題解決の案や構想図の作成にも関わった。その構想図は、東京都中央区の長期構想に使われ、2001年には、東京都の「震災復興グランドデザイン」の計画にも使われた。更に知事や建設大臣の求めもあった「首都高の在り方の委員会」の発足にもつながり、問題の明確化とともに解決の事業化へ期待も生まれた。しかし、建物の中に高速道路を通す案が出され、実施には程遠い答えでとどまった。数年たって、案のコンペや総理大臣の求めに応じた委員会も発足し案も提示されたが、事業化や詳細はまだ目途がたっていない。(株)首都高速道路も安全性を指摘したが、老朽状態の危ない高架道路のままだ。環状道路ができれば、撤去を検討するとされたが環状道路ができても、危険なままの先送り状態だ。

逆さを逆さにして正常化へ

先が見えない状態だが、逆に絶好のチャンスとしたい。
縦割りや財政の問題を抱える行政の状態だから、そこに頼るのではなく、解決は民間主導でもできる策にあるのではないだろうか。それは、金がかかる地下トンネル方式で単に通すのではなく、投資に経済的で利回りも発生する総合的な地下構造の策があり得る。運河的な川だから工事する部分の水を一時抜いて、上から素掘りすれば格段に安く上がる。その掘った空間に、利回りも発生する賃貸床を併設した地下構造を造り、その低い階を道路や駐車場とする策だ。その図化や試算は2004年に作ったが、波及し、アムステルダムでも2008年に同様な案が発表されている。都心は高い賃貸床が見込まれ、建設投資に対して高い利回りとなる。利の一部は、森の再生等にも生かせる。民間が行うならば土地は借地となるだろうから、公共側にも借地代や様々な税収入が入る。掘った土は舟で沿岸の盛土のために運び、陸上交通等には支障も少なくできる。地下は、温度が一定だから空調等の省エネに繋がり、支持地盤に届く地下構造ならば、耐震性は有利で、地域のライフライン幹線共同溝としても機能する。地下構造の上は、浄化した水で、その直下階は、天井を強化ガラスにして水面の先に空の光が見える明るいモール街にもなる。出資は、子供のお年玉程度の額から出せて利回りある債権を発行すれば、子供の時から環境再生の意識も高まる。西欧も運河で栄えたから、この案は世界にも波及できるかもしれない。そんな将来をも思い巡らし、道や水の本来の姿を、道の出発点で問いかけ語り合えると考えれば、嘆きも逆に感謝や歓びに変わる。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2016年01月06日の過去記事より再掲載)

著者について

小澤尚

小澤尚おざわ・ひさし
国内や外国の現地でのスケッチとともに、昔の姿の想像図や、将来への構想や設計の図も、ハガキに描き続け、ハガキをたよりに、素晴らしい間の広がりを望んで活動。2004年から土日昼は、日本橋たもとの花の広場で、展示・ライブ活動を行ってきた。 東京藝大建築科卒、同大学院修了。(株)環境設計研究所主任を経て独立し、(株)小沢設計計画室を設立し、広場や街並み整備も手掛けた。宮城大学事業構想学部教授(1997~2013)を経て、設立した事務所のギャラリー・サロン(ギャラリーF)を日本橋室町に開設・運営。2021年逝去。

連載について

建築家・小澤尚さんによる連載「よいまち、よいいえ」。 「いえ」が連なると、「まち」になります。けれど、ただ家が並べばよい、というのものではありません。 まちが持つ連続性とは、空間だけでなく、時間のつながりでもあります。 絵と文を通じて、この関係を解いていきます。