おひさまと二十四節気

Vol.19  立冬・こたつ

こたつ

みかんも良し、アイスも良し、読書も編み物も良し。
でもうたた寝をして風邪をひかないように、、
(画・祖父江ヒロコ)

冬が立つ ── 立冬を迎えました。冬めく今を、日常生活の中でのわずかな変化に感じる頃です。立冬の初候は「山茶始開(つばきはじめてひらく)」ですが、“え?”と思われたかもしれませんね。「山茶」がひらがなで「つばき」と表記されていますが、それは字の通り「山茶花(さざんか)」をいいます。椿の花期は12月~4月で、落花は首から落ち、芳香はありません。一方の山茶花は、晩秋から冬にかけて花を咲かせます。「椿に似て椿より淋しい」という例えがありますが、花を一枚一枚散らせ、独特の匂いを放ちます。

さて、日本の冬の暮らしを語るのに欠かせない言葉といえば、「こたつ」を挙げる人も多いかと。今は少しずつその保有状況に変化がみられますが、やはりなんともいえない愛着心が消え去ることはありません。

こたつの漢字は現在、「炬燵」と書くのが主流です。もともとは、炉を切った上に(やぐら)を置き、布団をかけて用いたもので、それがやがて私たちに馴染み深い電気炬燵(置炬燵(おきごたつ))に姿を変えました。足の先から「暖かさ」が体中に染み渡る、その心地よさが、庶民の冬に欠かせない暖房器具として、根強い定着をみせたのでしょう。

実は「暖かさ」というのには、熱の伝わり方によって3つの種類があります。湯たんぽやホットカーペットのように直接触って伝わる『伝導』、ファンヒーターやエアコンのように空気の流れで感じる『対流』、そして、炬燵やオイルヒーターのように「赤外線」によって触れていない場所から伝わってくる『放射』です。あの“陽だまり”の暖かさは、太陽からの「赤外線」による放射によって感じられるものです。

人の身体は、夏はもちろん、冬でも常に放熱しています。放熱が速すぎれば「寒い」、遅すぎれば「暑い」と感じます。ということは、<暑さ・寒さを調節する=人の体の放熱を調節する>ことになります。そこで、人の体からの放熱について詳しく調べてみました。すると、呼吸(14%)・発汗(18%)・対流(26%)・放射(42%)と、その多くを占めるのが放射によるものでした。私たちは、家が寒い・暑いという話題になると、たいてい「室温(空気温度)が何℃だ」という話をしますが、実際に人の体に大きく影響しているのは、三番目の『放射』で、天井・壁・床といった場所の温度が、実は暑さ・寒さに大きく影響しているのです。

と、少しかたい話になりましたが、ようは「やっぱり、こたつは、気持ちいい」ということで(笑)、最後にこの一句を。

── うたゝねの夢美しやおきごたつ
(久保より江) ──