住まいのグラフィティ
Vol.34 矢吹町中町第二災害公営住宅
岩堀未来建築設計事務所
長尾亜子建築設計事務所
東日本大震災で被災した福島県内陸の矢吹町の災害公営住宅。
新たに形成されるコミュニティが自然に育まれるよう、生活気配が外に醸し出される開かれた公営住宅を目指した。
建築は、南北に抜ける大小の筒状空間である「通間」で構成されたユニットを不整形な傾斜地に雁行配置している。「通間」の南に作られたダブルスキンを居室化した「縁にわ」は、町民が自由に通り抜け可能な「にわ」や「みち」に面している。これが住人のコミュニケーションを促し、日射制御や自然通風を可能にする。
気配、視線、光、風、熱といった環境総体を作り上げる要素を調整・変化させる空間的な仕掛けを単純なシステムにまとめた、生活の背景となる建築である。
岩堀 未来 長尾 亜子

法面の間を抜ける「みち」。町の人たちが自由に通り抜けることができる。(撮影:淺川敏)

「みち」と住棟間を抜ける「小みち」の交差点にはシンボルツリーのある休憩場所を配置した。(撮影:淺川敏)

南北に抜ける「通間」。風が通り抜ける明るい居住スペース。左側は収納が集約された機能空間。(撮影:淺川敏)

ライフスタイルに合わせて空間を分割・連続させることができる引戸。ツーバイ材の梁がリズミカルな印象を与えている。(撮影:淺川敏)

「縁にわ」越しに隣接住棟の北側を見る。「縁にわ」の仕上げは、外部の木部と合わせている。(撮影:淺川敏)

まちの景観計画を踏襲し、白を基調に茶色をアクセントとして使っている。(撮影:淺川敏)

まちの灯り。外灯とポーチ灯は暗くなると点灯する。「縁にわ」の照明は、室内と連動してあかりが灯る。(撮影:淺川敏)
※「矢吹町中町第二災害公営住宅」は、2017年度「グッドデザイン賞」を受賞