ちいきのたより

Vol.44  富士吉田の建物、今昔物語
山梨県富士吉田市 滝口建築

こんにちは。最近、肩こりが酷く、とうとうピップエレキバンのお世話になっている滝口建築のあゆみです。
二十四節気は小満。七十二候は麦秋至むぎのときいたるですね。

初めてこの季節の文字を見たときは、なんで夏なのに秋なんだろう? と思ったものです。
実は、この「秋」とは季節の秋ではなく、実りの時という意味だそうです。

小麦はもちろん、私の大好きなビールの原料の大麦も、この時期に収穫をするそうです。
残念ながら、たきけんのある富士五湖地域では麦の栽培はしていなさそうなので、その様子は見られませんでした。

2巡目のちいきのたより。この地域の特徴のある建築ってなんだろう?
頭を抱えてしまいました・・・。

なぜなら、私は生まれも育ちも富士吉田。他の地域で生活をしたことがないので、何が富士吉田の特徴なのかがわからないのです。

そういう時は郷土資料館だよね! と、とりあえず富士吉田市立郷土資料館へ。
ここには、18世紀初頭に建てられた民家が移築されています。
今回見学できたのは、宮下家。

富士吉田市立郷土資料館の宮下家住宅

宮下家住宅


現存している当時の他の民家と比較すると、宮下家は窓や勝手口が小さく、かなり閉鎖的な造りになっています。
これは富士吉田がとても寒い地域なので、冬季に少しでも熱が逃げないように窓を少なく造っていたからだそうです。


次に訪れたのは、上吉田地域にある旧外川家とがわけ住宅。
こちらは1768年に建てられ、富士山の世界文化遺産の構成資産にもなっています。
というのも、旧外川家住宅は「御師(おし)」と呼ばれる富士講の司祭の家で、富士山信仰のために集まった富士講の宿泊施設&祈祷所だったのです。

祭壇

旧外川家住宅


こちらは、とても特徴のある構造です。京都の町家をイメージするとわかりやすいですね。
狭い間口から、奥に長く延びています。
表通りからはタツミチと呼ばれる前庭のような通路があり、中門をくぐるとヤーナ川が流れています。
ヤーナ川と主屋
このヤーナ川で心身を清め、主屋に入ります。
ヤーナ川
主屋の中には、富士講の安全を祈願する祭壇が設けられていたり、建物の一番奥には御神木やお社も。
御神木
ここで、御師の家族は生活し富士講を迎えていたそうです。

そして現在の富士五湖地域の住宅を改めて考えてみると、やはり寒さ対策が重要だと痛感します。

富士五湖地域では、瓦屋根をほとんど見ることはありません。
寒さで瓦が割れてしまうので、トタンやガルバリウムの屋根が多いです。
寺社仏閣でもトタン屋根。先ほど紹介した御師の家もトタン屋根です。
耐寒瓦の性能が良くなってきたり、洋瓦が流行ったりもしましたが、やっぱり金属屋根を選ぶ方がとても多いです。

そして実は、断熱に注目するようになったのはごく最近なんです。
築20年以上の住宅は基準が東京とほぼ同じだったので、とても寒い家が多いのです。
富士五湖地域の中では比較的暖かい富士吉田でも、真冬の気温は-10℃を下回ることも多いのに、雪の少ない東京とほぼ同じ基準で建てているので寒いわけです。
私の実家でも、冬は食品を凍らせないために冷蔵庫に保管していますし、家の中で逆さつららが見られます。
断熱に力を入れるようになってきたのは、ここ15年くらいじゃないかなと感じます。

暖かい家っていいですよね。
たきけんはこれからも暖かい家を造っていこうと、気持ちを新たにしました。

滝口鮎美
ちいきの記者
滝口鮎美たきぐち・あゆみ
生まれも育ちも山梨県富士吉田市。何か作るのが好き。編み物、刺繍、ソーイング、料理・・・何でも作ります。最近は草木染めにはまっています。
初めての就職先は左官職人。その後転職し、もう建築業には携わらないだろうと思っていたら、まさかの永久就職。現在は3人の子育てと仕事・家事・・・と奔走中。

 

山梨県富士吉田市滝口建築施工事例
(株)滝口建築たきぐちけんちく
山梨県富士吉田市上暮地5-3-18
TEL:0555-23-3915
URL:https://www.taki-ken.com
三代目棟梁をはじめとした社員大工。町の工務店ネットや建築家との連携。観光地での店舗づくり。寒冷地での高断熱、ZEH、サスティナブル住宅。「はこづくりから、くらしづくりへ」と掲げた地域活動、移住促進、大学連携。そして田園居住。富士山のふもとで、あたたかな住まいとくらしの風景をつくり、「面白いをつなぐ」工務店として活動しています。

ちいきのびお参加工務店さん全国図

ちいきのびお