住まいのグラフィティ

Vol.51  緑畔のテラス
ー季節に溶ける住まいー

スタジオ(みゅう)一級建築士事務所

南北に山を望み、眼前には清流が流れる絶景の地に、終の住処を建てたいというのが建主の夢。定年退職後の時間を自然と共に過ごしたいという希望を叶えるため、自然を五感で楽しむ住まいを提案しました。風景を目で愛でるだけでなく、光の入り方や風の流れも熟考し、身体に直に触れる仕上げ材は無垢材を使い、素材感も大切にしました。

設計にあたっては、何通りもの案を検討してそれぞれの模型を作り、建主と密に打ち合わせを重ねました。映像ジャーナリストの建主はそれをカメラに収め、家づくりのプロセスも楽しんでくださいました。そして、施工は「町の工務店ネット」のメンバーであるシーク建設(滋賀県長浜市)の前嶌さんにお願いすることに。施主、設計、施工がひとつになって、心身ともに居心地の良い、理想の住まいが完成しました。

郡 裕美
緑畔の家夜の外観

夜景外観。山と川に挟まれた自然豊かな立地。せせらぎが間近に聞こえる。

2階リビングの大きな窓からの景色

風景の中にふわりと浮かぶ2階。南北に天井までの大きな窓を作って開放的に。目前には見事な桜と小川のせせらぎ、遠くには山の風景。景色を楽しみながら毎日を過ごせる。

ダイニングに繋がる大きなバルコニー

キッチンと隣接した広めのバルコニーは、お天気の良い日に朝食を食べたり、友人を招いてパーティーを開いたり、楽しく使えます。

傾斜のある天井

内外にまたがる傾斜天井が室内と風景をつなげる。ダイニングキッチンは低い天井で(空調用ダクトスペース)落ち着いた空間を作る、機能と空間計画が一体化したデザイン。

寝室予定の空間

リビングとひとつながりになった空間はソファベッドを置いて寝室に使う予定。北側の窓からも、山の風景が楽しめる。

薪ストーブがある土間サロン

縁側のある土間のサロンには料理もできる薪ストーブがある。手を伸ばせば小川のせせらぎに届きそう。
縁側に座ってくつろいでいると、清流から届く夏の涼風が気持ちいい。

大きな窓がある書斎コーナー

開放的でありながら落ち着いた書斎コーナーは、思索と創作の場にぴったり。

ソファベッドを置いたサロン兼ゲストルーム

1階のサロンにソファベッドを置けば、ゲストルームにも使える。上部の通風用窓は、空間の流れを感じさせ、南北の通風を確保する。サイドの小窓からは光と風が入ってくる。

DATA
■物件名:緑畔の家-景色を楽しむ終の住処-
■所在地:滋賀県高島市マキノ町
■家族構成:2人(夫婦)
■構造:木造2階建
■敷地面積:188.84㎡(57.12坪)
■延床面積:107.98㎡(32.66坪)

■竣工年月日:2019年3月
■設計:郡 裕美+遠藤敏也/スタジオ宙
■施工:シーク建設株式会社
■写真:川村憲太(tametoma)

著者について

郡 裕美 / 遠藤敏也

郡 裕美 / 遠藤敏也こおり・ゆみ / えんどう・としや
郡裕美(左)
建築家/美術家。名古屋市出身。1983年京都府立大学生活科学部住居学科卒業後、1991年スタジオ宙を設立。1991年コロンビア大学建築学部修士課程修了後、1996 年コロンビア大学准助教授就任。イエール大学、名古屋工業大学、東京理科大学など、日米両国で建築教育に携わる。2016年より大阪工業大学教授。執筆:『居心地よさの発見 家づくりのコトバ200 』(エクスナレッジ)、『夢見る力』(王国社)。

遠藤敏也(右)
建築家。静岡県出身。1984年工学院大学工学部 建築学科を卒業後、共同制作一級建築士事務所勤務。フリーで設計活動をした後、1991年にスタジオ宙を設立。現在に至る。

*「スタジオ宙(みゅう)」について
郡裕美と遠藤敏也がユニットを組んだ一級建築士事務所です。自然とのつながりを大切にし、人の心に響く美しい建築、想像力を喚起する楽しい空間を心がけています。新築、増改築、古民家再生、さらに空間アート、舞台美術も手がけます。主な受賞:「住宅建築賞」(東京建築士会)・「東京建築賞」(東京建築士事務所協会)・「The ar+d awards 」(英国)・「大阪都市景観建築賞」・「ARCASIA建築賞ゴールドメダル」(アジア建築家評議会)・「JIA環境建築賞」(日本建築家協会)など多数受賞。千葉県佐原の伝統的町並再生に対して2015年度「日本建築学会賞」を受賞。

連載について

この連載は、住まいづくりの最前線を伝えるコーナーです。設計事務所や工務店の建築事例をグラフィカルに紹介していきます。どんな住宅と出合えるだろう、そんなワクワクした気持ちで覗いてください。