まちの中の建築スケッチ

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駒沢オリンピック公園
——街の中の運動施設群——

駒沢オリンピック公園

大学2年生の9月に、晴れて建築学科の学生になった。駒沢の運動公園は、馬込の家からもそう遠くないので、何度か出かけた。スケッチをした記憶もある。今はオリンピック公園と呼ばれている。なぜか東京オリンピック2020の会場にはなっていないようだ。
芦原義信(1918-2003)の40代の脂ののったときの作品。とにかくだだっ広い中央広場は、東西に横切る駒沢通りよりも6mくらい高いレベルにある。大階段は幅が50mくらいあるだろうか、13段ごとに踊り場を介している。階段のどこに座っても、気持ちよい広がりを感じる。
芦原が現役の建築家として東大に教授として迎えられたのは、筆者が卒業した1970年である。そして有名な「街並みの美学」の出版は1979年。直接に教えを乞う機会はなかったが、まさに都市景観の実践が、ここでなされていたわけだ。当時の大学での設計の講義は、オープンスペースに壁を配置したり、施設を置いたりということから始めるので、参考に見に来たということかもしれない。
懐かしい思いを持って、この暑い夏の夕方に出かけてみた。1周2㎞のジョギングコースやサイクリングコースもあって、都市の運動公園として使われている。木陰や建物の影では、中学生や高校生がダンスをしたり、階段に座って語り合っていたり。空はけっこう広く、ところどころに高層のマンションなども見えるが、緑の壁の向こう側である。
これだけの広さをもつ運動公園が街の中にあるというのは、さすがに90万人の世田谷区で羨ましい。砧公園には世田谷美術館もある。72万人の練馬区の運動公園は運動場だけだし、71万人の大田区は多摩川畔か海沿いに、施設がばらばらとあるだけだ。
いざスケッチをしてみると、気になることが見えてくる。大きなスケールで駒沢通りに橋がかかっているのだが、橋の裏の側面は、なにやら後から加わった配管や施設の何かだったり、ごちゃごちゃしている。仮設の小屋も、もう少し美しく建てられるのではないかと思った。そしてベンチもないわけではないが、木立は育っていて気持ち良い散歩コースなのに、少ない。
屋内競技場の壁にもたれて、駒沢通りの向こう側の中央広場のオリンピック記念塔(管制塔)を描いた。絵から外れるが、左手に体育館、右手に陸上競技場がある。手前には、自転車で集まった子供たちが階段に座っている。駒沢通りは、駐車禁止だが、けっこう車は止まっている。ダンプが駐車していたりもする。木々の間には家族連れも見える。
緑が大きくなって深くなっているのが何よりも気持ちよい。災害の避難場所としても大きな役割が期待できそうだ。