色、いろいろの七十二候

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雷乃収声・綿

綿
こよみの色

二十四節気

しゅうぶん

秋分
真朱色まそお/しんしゅ #EC6D71

七十二候

かみなりすなわちこえをおさむ

雷乃収声
猩々緋色しょうじょうひいろ #E2041B

綿というと、思い浮かぶのは木綿です。
木綿(tree cotton)は、平安朝初期に中国から貢物として入りました。やがて戦国時代の「戦闘服」や旗などに用いられ、一気に普及しました。しかし、古代や中世には、綿といえば蚕の繭から作られる絹の真綿(floss silk)を指す言葉でした。
また、最近でも布団や座布団に詰めるものは、ポリエステルなどの合成繊維であっても「綿」と呼び慣らしています。ポリエステルは、木綿の2倍のかさ高が得られます。

麻繊維による麻綿もあります。さらっとした肌触りがよく、夏用布団に用いられます。ガチョウや鴨の羽毛などは、綿といわず羽毛と言いますが、これは木綿や麻綿より高価だからでしょうか。
天然の鉱物を繊維状にした石綿や、岩綿 (ロックウール)もあります。海綿や鉄の繊維によるスチールウールもあります。縁日の駄菓子に綿菓子もあったりします。魚の腸も”わた”といいます。

けれど、七十二候にいう綿は、木棉を指します。
葵科、学名 Gossypium ワタ属。紀元前2500年頃から、古代インダス地方(インド)で繊維作物として栽培されてきた「綿」です。英名では「コットン」。英名の由来は、花がさいた後にできるコットンボール(実)です。この実がはじけ、中から白い綿繊維があふれ出ます。それが綿(綿花)です。草丈60センチ。花は、7~8月ごろ開花します。白、黄、まれに紅色。五弁の花。花が咲いたあと、コットンが実を結び、成熟すると開裂し、種子の表面に生じる毛状の繊維を摘んで綿をつくります。

しらぬひ 筑紫(つくし)の綿は身につけていまだは着ねど暖かに見ゆ
  「万葉集」 沙弥満誓の歌
綿の花たまたま蘭に似たるかな
  素堂
大坂の城見えそめてわたの花
  蘭更
綿の花白し夕立の峯一つ
  山口青邨
文/小池一三
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2011年09月23日の過去記事より再掲載)