まちの中の建築スケッチ

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夢の島体育館
——公園の中のドーム建築——

夢の島総合体育館

江東区の夢の島は、もともとはゴミの埋め立てで出来たということで、あまり評判の良くないところであったが、今はそんな痕跡も感じられず、緑豊かな運動公園になっていて気持ちのよい場所である。園内の施設としては比較的早く、総合体育館が坂倉建築研究所の設計により1976年に建設された。大小の半円の円筒ドーム2棟が2列からなる。
このような、いわゆるカマボコ型の形状は、兵舎とか工場を連想するのであるが、直径40mの半円のアーチが、3.5mの壁の上に架けられるとなると、迫力はなかなかのものである。コンクリートの壁もレンガ色の落ち着いた基壇となって、ドーム屋根を支えるメインのアーチの足元のピン接合部にも存在感がある。ちょうどその壁と屋根の隙間は、室内側にとっては高窓になっていて、落ち着いた光を取り込んでいる。
かつて日本建築学会の建築雑誌の編集にかかわっていたときの企画「構造パースペクティブ」について触れたが、構造体をCADで表現するシリーズで取り上げた中で初期のもののひとつである。さらに、荷重と構造の関係の視覚化のスタディとして、雪荷重を東京のように1㎡あたり30㎏程度から雪国の300㎏や600㎏と増加させたときにアーチ梁の鉄骨断面がどのように大きくなり、見た目でもどうなるかという検討をしたことを思い出す。(建築文化1990年11月号pp.98-99参照)
坂倉建築研究所は、坂倉準三(1901-1969)の創設した事務所である。余談であるが、筆者の叔父の神田準三から、「岐阜の羽島から東京に出て来て一旗揚げた、同じ準三なんだ」という自慢話を聞いたことがある。
夢の島体育館のときには、すでに故人となっており、坂田誠造が担当している。半円形のドームということになると、天井は壁際から高くなり室内としては使いやすい形であるが、外観が単調なドーム形状となる。それを、大小並べて配置することで全体のリズムが生まれている。現在は、RC4階建ての東京スポーツ文化館を本館として、スパン40mのメインアリーナ、温水プールと、スパン17mの柔・剣道場、サブアリーナの構成になっている。
スケッチに訪れたときは、隣のフィールドでアーチェリーの大会が行われていた。熱帯植物館や第五福竜丸展示館などもあり、スポーツや文化の公園の中で、迫力ある形態で46年を経て、今も新鮮さを感じさせる建築である。

著者について

神田順

神田順かんだじゅん
1947年岐阜県生まれ。東京大学建築学科大学院修士修了。エディンバラ大学PhD取得。竹中工務店にて構造設計の実務経験の後、1980年より東京大学工学部助教授のち教授。1999年より新領域創成科学研究科社会文化環境学教授。2012年より日本大学理工学部建築学科教授。著書に『安全な建物とは何か』(技術評論社)、『建築構造計画概論』(共立出版)など。