森里海の色
四季の鳥「サンコウチョウ」

林道を舞う長い尾羽

7月上旬、久しぶりにマイフィールドの林道を早朝に歩きました。渓流沿いにしばらく行くと、スギ、ヒノキのかなり高いあたりからホイホイホイと尻上がりの囀りが聞こえてきました。サンコウチョウです。サンコウチョウは5月上旬に毎年マイフィールドにやって来て、夏の間、滞在する夏鳥です。
サンコウチョウは誰が見てもわかる独特の美しい姿をしています。特に繁殖期の雄の尾羽は体長の3倍もあります。顔面部は黒紫色、腹部は濁白色、背面はやや赤みのある黒紫色をしており、アイリングと嘴はよく目立つ明るい水色をしています。 これに対して雌の尾羽は短く、赤みがあり、アイリングと嘴の水色は不明瞭です。

さんこうちょう 三光鳥

サンコウチョウは漢字で「三光鳥」と書きますが、名前の由来はこの鳥のさえずりが「ツキ(月)ヒ(日)ーホシ(星)、ホイホイホイ」と聞えることからと言われています。
さえずりを頼りに木立の暗がりの中を双眼鏡で追うと、雄のサンコウチョウはスギに巻き付いたフジのツルに止まりました。そこには漏斗状の巣があり、抱卵中の雌が雄と入れ替わりました。サンコウチョウは雄と雌が交代で抱卵し、2週間ほどで孵化、雛は10日ほどで巣立ちます。
マイフィールドの林道で毎年サンコウチョウがつくる巣のほとんどはこうした高いスギの木の、しかも垂れ下がった箇所がほとんどです。これはおそらく天敵であるアオダイショウから巣を守るためでしょう。巣にはスギの樹皮が使われており、外側にウメノキゴケがクモの糸で張られています。ウメノキゴケはコサメビタキの巣にも使われており、ほとんど木の枝と見分けが付かないほど見事にカモフラージュされています。
マイフィールドの林道では毎年3~4つがいほどのサンコウチョウがそれぞれのテリトリーをつくって営巣するのを確認していますが、ここ数年、営巣の途中で巣を放棄することが多くなっています。いちばんの原因と考えられるのは特定外来生物タイワンリスによる卵や雛の補食です。雄の長い尾羽が抜けて南方に帰る秋の初め、今年生まれの若鳥が何羽いるか、気になるこの頃です。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。