森里海の色
四季の鳥「ライチョウ」

氷河期の生きた化石

今年7月、町の工務店ネットの富山でのセミナーに参加した私は、その翌日、室堂まで脚を伸ばしました。目的は高山の鳥を見るためで、特にこの時期のライチョウは運が良ければ生まれたばかりの雛にも会えるかもしれないと期待したのです。室堂は標高2450m、剣・立山連峰登山の拠点で、富山市内のうだるような暑さから解放されるだろうという思いもありました。室堂に着いたのは9時近く。雪を残した3000m級の山々が眼前にそびえ、深いブルーのミクリが池には大きな雪の塊が浮いています。
日本にいるライチョウは北半球北部に広く分布するライチョウのなかでも最南端に隔絶して生息する亜種で、絶滅危惧1B類、国の天然記念物に指定されている鳥です。室堂周辺には約280羽が生息すると言われています。成鳥の全長は37センチほど。羽は季節に応じた保護色をしており、普通の鳥は年に2回、換羽しますが、ライチョウは3回換羽します。冬の間、純白だった体羽は春に雄は黒褐色に、雌は黄褐色に変わり、雄の目の上の赤い肉冠が目立つようになります。7月中旬、雛が巣立ち、縄張りが解消されると、雄は全身の換羽を開始し、雌も遅れて換羽を8月から9月にかけて行い、雌雄共によく似た黒褐色になります。そして初冠雪を迎える10月中頃、黒褐色の羽は抜け始め、徐々に全身が白い羽衣に覆われるようになり、本格的な冬を迎えます。

雷鳥 らいちょう

この日、ハイマツ帯のなかの岩陰でじっとしている黄褐色の雌のライチョウをようやく見つけることができました(写真のどこにいるかわかりますか?)。動きはおそろしく緩慢。そのほうが空からの天敵に見つかりにくいからでしょう。残念ながら雛を連れたライチョウ家族には会うことができませんでした。ガスがかかるとハイマツから出てくる可能性が高いのですが、今回は天気が良すぎました。来年6月上旬、見晴らしの良い岩の上で縄張り宣言している雄のライチョウを見に、室堂を再訪したいと思っています。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。