森里海の色
四季の鳥「ノゴマ」
赤い喉のカリオペ
前回、ツメナガセキレイをご紹介しましたが、今回も北海道探鳥遠征で出会った野鳥をご紹介しましょう。それはノゴマという鳥です。ノゴマは北海道以外では旅鳥として分類される鳥です。繁殖地はユーラシア大陸東北部で、国内では北海道で繁殖が確認されています。越冬地は東南アジア。その移動の途中に短期間、北海道以外の地域にも訪れることがありますが、私はこれまで観察したことがありませんでした。今回の遠征ではサロベツ湿原でも、その後に訪れた大雪山旭岳でもハイマツの上で雄がさえずっているのをよく観察することができました。
ノゴマの特徴はなんと言っても雄のよく目立つ赤い喉元です。ノゴマの英名はRuby Throat、まさにルビー色の喉をしています。体長は15センチほど、スズメくらいの大きさです。体は褐色で眉と嘴の根元が白く、雄は過眼線の黒と赤い喉が目立つのに対し、雌の喉は白く、目元も黒くないので、雄に比べてとても地味な印象です。
雄のさえずりは複雑で、キョロキリキョロキリ、キーキョロキーチリリと、声量のある美しい声で鳴きます。このことから名前の由来は「野に生息するコマドリ」だという説が一般的です。学名のcalliopeもギリシア神話に登場する文芸の女神で、美声の意があるそうです。
霧深い湿原のハナウドやエゾカンゾウの上で、喉元の赤さを目立たせ力強くさえずるノゴマは、見る人に強い印象を与える北の大地を代表する野鳥です。