森里海の色
四季の鳥「ツツドリ」
秋の渡りの前の大食らい
鳥の鳴き声は実に多彩です。うっとりするような美声の持ち主もいれば、けたたましいだけの鳥もいます。なかにはまるで夜に鳴く虫のようなとても鳥とは思えない声の持ち主もいます。今回、ご紹介するツツドリも鳥とは思えない鳴き声の持ち主です。
春から初夏にかけて山麓の森を歩いていると、空のビール瓶か牛乳瓶の口を掌で叩いたようなポンポンポンという鳴き声を耳にすることがあります。ツツドリ(筒鳥)という名前もそこから由来しています。
ツツドリはカッコウの仲間で、春になると東南アジアから日本に飛来し、北海道から本州、四国で繁殖する夏鳥です。カッコウやホトトギスとほとんど見分けがつかないほどよく似ていますが、鳴いてくれれば見分けがつくのは、他のカッコウの仲間と同じです。
以前、カッコウの托卵について書きましたが、ツツドリも他の種に托卵する鳥です。ツツドリの托卵相手はセンダイムシクイが多いのですが、他にメボソムシクイ、ヤブサメ、キビタキ、メジロ、ウグイス、モズ、アオジ、カワラヒワなどが知られています。
昨年9月下旬、里山をそっくり保存した近くの公園をぶらりと散策したときのことです。広い公園をくまなく歩いても鳥の気配は薄く、ようやく湿地のハンノキ林でキビタキやシジュウカラの声を聞きました。見上げると、その一本の梢に動くものがいます。双眼鏡を覗くとツツドリでした。
ハンノキの葉は虫に食べられて穴ぼこだらけ、葉脈だけになった葉もあります。さらによく見ると、葉の縁には小さな緑色の青虫がびっしり付いていました。家に帰って調べてみると、ハンノキハバチの幼虫であることがわかりました。
公園の鳥たちがハンノキに集中していたのはこれが原因でした。ツツドリは羽根をばたつかせ、バランスをとって青虫をゲット。越冬地に向かう前の大食らい。ツツドリの食欲はどうにも止まりません。
春から初夏にかけて鳴き声を聞いてもなかなか見ることの難しいツツドリですが、平地に下りてくる秋の渡りのシーズンには、都市部の公園でも間近に見る機会のある鳥です。