森里海の色
四季の鳥「メダイチドリ」

8月の夕暮れの海岸で

8月に入り、ずいぶん日が短くなったと感じるようになりました。日が傾いた頃、近くの海岸に散歩に出かけました。薄暗い海岸に海水浴客はめっきり減っていましたが、波打ち際は近所の犬たちの散歩コース、鳥を見つけても犬たちがシャッターチャンスをたびたび奪ってしまいます。散歩人が前を通り過ぎ、犬から逃げた鳥の一群が私のいるほうに飛んできて、近くに降りたちました。メダイチドリでした。どの個体も夏羽の赤褐色が薄れて、冬羽に移行中。今年生まれの若鳥も混じっていました。
毎年、春と秋の2回、シギやチドリは日本の海岸に旅鳥として訪れますが、盛夏の8月には秋の渡りのシーズンが始まっています。このメダイチドリの一群もカムチャツカ半島やアリューシャン列島の繁殖地からはるか東南アジアからオーストラリア、ニュージーランド沿岸の越冬地に渡る途中、湘南の地にしばし立ち寄ってくれたのです。滞在期間は2、3週間といったところでしょうか。

目大千鳥 めだいちどり

海岸は台風の接近で波が大きく、時々ドーンと波しぶきを上げています。波をかぶってずぶ濡れの一羽が夕暮れの海風に羽根を震わせていました。大波を背景に撮ったメダイチドリはどの子も少し不安そうに見えます。大丈夫だよ。大丈夫。旅立つ前にゆっくりお休み。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。