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麋角解の麋はトナカイか?

12月下旬の七十二候「麋角解」。インターネットで調べると「さわしかのつのおつる」と読んだり「おおしかのつのおつる」と読んだり、がトナカイだったりヘラジカだったり。人や媒体によって読み方や説明や解釈がさまざまな七十二候になっている。しかし、読み方はともかく、七十二候がもとは中国の暦ということを思い出せば、麋が黄河流域や長江流域にいないトナカイやヘラジカではないことは確かだ。

ではこの麋は何の動物を指すのか?

「新字源」改訂版によれば麋は馴鹿、古くは四不像(シフゾウ)を指すと書いてある。麋はシフゾウだった。鹿の角を持ち、牛の蹄を持ち、馬の顔をして、驢馬のような尾を持ちながらその四つのどれともていない四不像(シフゾウ)である。

古代中国の地理書「山海経」には「其獸多麋、鹿、㸲牛」(南山経)や「其獸多麋鹿」(東山経)と麋について記載がある。シフゾウは中国ではありふれた動物だった。しかし沼沢地に多く生息していたシフゾウの野生種は絶滅した。戦乱などで北京で飼育されていた個体も絶滅したけれど、ヨーロッパで貴族によって飼育されていた種が生き残り、東アジアに里帰りして繁殖している。シフゾウの奇蹟の復活劇はグーグルで検索してぜひ読んでみてほしい。今では日本でも多摩動物公園や安佐動物公園や熊本市動植物園で飼育されている。

そのひとつ、多摩動物公園の公式twitterがこんなことをtweetしていた。

多摩動物公園のシフゾウ

筆者が多摩動物公園を訪れた1月6日、角の落ちていた雄のシフゾウ(一番左)

この約一か月後、筆者は1月6日に多摩動物公園を訪れて角が落ちているのを確認した。ちなみにトナカイはまだ角を持っていた。時季的にもシフゾウの角の落ちる時期は七十二候の麋角解と合致する。それに七十二候は中国の暦であることを考えれば、麋はシフゾウを示すということで間違いない。(甲)

多摩動物公園の馴鹿

1月6日になっても角の落ちない多摩動物公園のトナカイ