色、いろいろの七十二候

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鴻雁北・春の色

春の明るい色の服
こよみの色
二十四節気
清明
幹色みきいろ #f2d88c
樹の幹の色からうまれた色で、くすんだ赤みの黄色。織色の色名。4月の誕生色。春の小枝のしなやかな色から、「花舞小枝はなまいこえだ」の名も。
七十二候
鴻雁北
浅緋あさあけ #DF7163
・茜で薄く染めた緋色ひいろ(やや黄色みのある鮮やかな赤)のことで、わずかに黄みのある赤色。 大宝元年の服制では「直冠上四階深緋。 下四階浅緋」となっており、『延喜式えんぎしき』においては深緋こきあけ、浅緋と、上から3番目に高位だった色です。 一般に緋あるいは真緋あけといわれる色はこの浅緋を指しています。

服制:衣服について定めた規則

草木の芽吹きや開花など、春の色が目に入ってくるようになってきました。寒い冬から暖かな春、気持ちも明るくなってきて、明るい色の服が気になります。

色が人の心理に影響を与えるという、さまざまな研究結果があります。暖色、寒色という言葉があるように、色によって暖かさを感じたり、寒さを感じたりもします。

例えば、赤い色は攻撃性を高めるという研究結果があります。古くは戦国時代、朱槍は武勇を極めたものの証とされたり、第一次大戦のドイツ軍エースパイロット、マンフレート・フォン・リヒトホーフェンは、赤い複葉機を乗機として、「レッドバロン」の異名をとりました。
創作の世界でも、「赤い彗星」シャア・アズナブルやら、スタートレックの赤シャツ乗務員は殺されやすいだとか、とかく赤は戦闘をイメージさせる色です。
赤いユニフォームのサッカーチームは得点率が高い、という調査などもあります。そういえば、日本でも赤いユニフォームのサポーターは、過激なことで知られています。

赤色は、男性ホルモンのテストステロンの濃度をあげる働きがあるといわれています。
野生では、攻撃性が高いこと、それが転じて威圧感を与えることが生き残るための手段であったのでしょう。また、赤は血の色でもあり、炎の色、太陽の色でもあって、生命活動にとって特別な色といえます。赤色に特別な反応を示すのは、ヒトもやはり生物であるという証左です。

赤というのは、このように攻撃的な色であり、情熱的な色でもあります。赤い服を身につけている人には、どうしても派手なイメージがついてきます。しかし、いくら赤が好きだとしても、住環境に大きく赤を持ち込むことはお勧めできません。ワンポイントで使うなら効果があっても、部屋全体が赤に染まっていると、前述のような理由で、落ち着けません。赤は自分の心理を見せる色であっても、囲まれてリラックスする色ではありません。店舗の内装を赤くすることで、回転率をあげる、なんていう話もあるほどです。

明るい春の色は落ち着き、やさしい気分になります。桜色、桃色、梅色。萌黄色、若草色、浅葱色。こうした、明るく淡い色は、春の生命を感じさせて、実際の色以上に、名前が美しさを増しています。

官能小説家の団鬼六が、「朱鷺色の蹴出し」という表記をしたところ、若い編集者に「ピンクの腰巻き」となおされて激怒した、という逸話があります。ピンクの腰巻きと、朱鷺色の蹴出しは、物質としては同じものであっても、人の心に入ってくるときには全く違います。

さて、毎年春を迎える前に、「今年の流行色」という話題を目にします。
流行というのは、自然にできるもののような気がするのですが、流行色というのは、国際流行色委員会で、流行する2年前に選定します。その後、情報会社などから流行色情報が発信され、その後メーカー、業界紙などがファッション情報として発信します。2年後のシーズンには、展示会やファッション誌などで一般向けに「今年の流行色」として発信されます。流行色というのは、「流行った色」ではなくて「流行らせる色」なんですね。

日本では、一般社団法人日本流行色協会(jafca)が国内向け情報発信を担当しています。今年の春夏レディスウェアカラーは、「”Quest”クエスト/探求、探索”」だそうです。一色の流行色が設定されているのではなく、この中にもグループがあり、それぞれにまた複数の色が用意されています。

さて、このようにたくさんある色、いったい何色あるのでしょうか。
パソコンに使われているディスプレイの多くは、RGB(赤緑青)の光の三原色を、それぞれ256階調ずつ表示できるので、256×256×256=1677万7216色が表示可能、ということになります。広辞苑の収録後数が24万語ですから、この1600万を超える色の全てには、当然名前がついていないでしょうね。

花見に行けば、皆しきりに桜にスマホを向けて写真を撮っています。けれど、それは1677万の中のどこかに固定されてしまいます。実際の桜色は、画面に閉じ込めておけないほうがいいような気もします。

白牡丹といふといへども紅ほのか  
高浜虚子

夏の句ではありますが、デジタル表現の色と、自然の作る色の違いが身に染みる一句です。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年04月05日の過去記事より再掲載)