腐葉土づくり

家庭だからできる自然農

皆さんは「自然農」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。農薬や肥料がないと作物は育たないと思っている方も少なくないかもしれません。しかし、作物は自然の力だけで十分に育ち、むしろ、そのほうが栄養のある美味しい作物を育てることができます。そして何より、自然のサイクルを活かした栽培方法は、持続可能な農業のあり方といえます。この連載では、自然農と家庭でできる農業について考えてみたいと思います。

Vol.3  自然の力を活かす農業―自然農

小さな菜園だからこそできる楽しい野菜づくり

前回までのお話で、家庭菜園をおこなうには自然農がピッタリであることが分かりましたが、では具体的にどのくらいの大きさの土地で何から育てたらよいでしょうか。藤松さんは家庭菜園をはじめるのは秋からがよいといいます。「春からはじめると自然農とはいえ(だからこそ?)、草や虫に悩まされてしまい、人によってはめげてしまうこともあります。草や虫の勢いがなくなっていく冬野菜からはじめられるとよいと思います。」

土地の大きさについては、もちろん腕にもよりますが、本格的に自給自足を目指すのであれば、例えば四人家族の場合3a(アール/1aは100㎡)くらいあるとよいといいます。ただ、一般的なご家庭の場合はそんなに大きな土地を確保するのは現実的ではないので、まずは一部屋(6畳間で約10㎡)くらいの大きさを一つの目安にしてもらえればよいのではないでしょうか。藤松さんは「限られた土地の中で収量をいかに増やせるか、というのも作物を育てる楽しみでもありますから、家庭菜園の場合はあまり背伸びせず、楽しみながらできることを優先していただければよいと思います。」と、無理なく長く続けられる規模を推奨されました。

藤松自然農園の農地は年々拡大している。左写真の手前の田んぼだけでなく、その奥の休耕田も藤松さんが耕作していく。右写真は左写真の田んぼから湖沿いに少し歩いた場所にある新たな農地。よい具合に雑草が生えていて、よい農地になりそうとのこと。因みに、自然農法、自然農、有機農業を各地で学び、長い実践を経て『自然菜園スクール』を開業し、自然菜園コンサルタントとして活躍中の竹内孝功さんは『1㎡からはじめる自然農園』という著書の中で「100㎡あれば、1~2人の1年分の野菜を自然菜園で自給することができます。」と書かれている。

落ち葉や雑草が最高の堆肥になる

土地が確保できたら次は土づくりです。「当然、土の状態によって採れる野菜は違ってきます。ただ草刈りをして種を蒔いただけでは、とくに地力が必要なハクサイやキャベツなどの結球する野菜や、トマトやナス、ピーマンなどの果菜類の野菜は育ちません。」でも、堆肥などを漉き込んで土づくりをおこなえば1年目から何でも育てることができるといいます。「比較的はじめやすいのはダイコンやニンジン、カブやネギ、イモ類などです。あと、ニンニクやラッキョ、リーフレタスなんかもいけると思います。」

土に混ぜる堆肥もわざわざ買う必要はありません。「ちょうど今頃は側溝などに落ち葉がたくさん溜まっています。これがとてもいい腐葉土になります。」落ち葉や刈った草などを溜めておき、米糠などを加えて土をかけ、その上から水をかけておけば微生物が勝手に堆肥にしてくれます。」できればブルーシートなどを被せて日光を遮り、空気と触れないように密閉しておくことでより発酵が進むそうです。「ホームセンターなどで販売している家庭菜園用の土や腐葉土よりも、側溝の落ち葉のほうが断然育ちがいいです。」自然の力を生かすだけで十分であり、そう考えると田舎の風景は宝の山に見えてきます。(最後に『堆肥の作り方』をご紹介しております。ぜひご参考ください)

堆肥造り中

刈った草や落ち葉を土の上にストックしておくだけで微生物が勝手に堆肥に変えてくれる。シートで覆えばさらに発酵が促進される。写真右は10月末に藤松さんが粉砕した稲わらの山。こちらはマルチングの素材として利用する。

種の特性に合った蒔き方がある

堆肥を漉き込んだ土ができたら次は畝を立てます。比較的育てやすい根菜類の種を蒔くとして、その蒔きかたも慣行農法とは少し異なります。「例えばニンジンの種は筋バラ蒔きをします。普通は筋に一粒ずつ蒔いていきますが、私は筋にパラパラとバラまいていきます。これはたくさん間引くのを前提にした蒔き方です。」慣行農法を前提とした種は“コーティング種子”といって、発芽率や生育を良くするためにあらかじめ種に肥料や農薬がコートされているそうです。

「もともとニンジンは発芽が難しい野菜の一つで、しばらくは種を湿らせた状態にしておく必要があります。そのうえ好光性種子といって日光がないと発芽しないので、私は種を蒔いたあと薄く土をかけその上に籾殻をかけて水やりをします。」そのうえで種を土と密着させておく必要があるため何度も何度も踏んで固めるそうです。「同じ根菜でもダイコンやカブなどのアブラナ科の野菜はそこまで念入りには踏みません。」

逆にダイコン等は種自体が大きく嫌光性種子のため日光がなくても発芽し、間隔も3cmほどで蒔くそうです。「大きい種には種そのものに地力があるので発芽しやすく、やはり小さい種のほうが難しいんです。ニンジンの種なんて小さくて種かゴミか分からないほどの大きさですから。」因みにニンジンはセリ科の野菜で、もともと水際のような湿気の多い場所に育つ植物が由来です。こうした種子の特性や原産地の気候などを知ることも自然農の面白いところだと藤松さんは語ります。

9月末に撮影したニンジンの畑。右の写真は12月初めに撮ったダイコンの様子。

「間引く」ことで「託す」思い

筋バラ蒔きしたニンジンの発芽のしかたも独特のようです。「一つ一つの種が小さいので、発芽するときも大勢が力を合わせて一斉に土を持ち上げて出てくる感じなんです。その姿には生命力を感じますよ。」密集した力で出てきた芽を間引くのも手間がかかります。「目と指先を使う細かな作業なのでボケ防止にちょうどいいと思いますよ。」逆に発芽してしまえばニンジンは虫にも強いのであとは間引くだけで済むそうです。「ニンジンにはアゲハチョウが付きますが、幼虫は大きくて目立つので見つけやすく駆除もしやすいですから、発芽さえしてしまえば比較的楽なんです。」葉と葉が触れるほどの間隔で間引いていき、最終的には15cm間隔ほどにしているそうです。「もちろん、大きくしたいなら20cmでも30cmでも構わないと思います。」

間引くときにはできるだけ強いものを残したいですから、間引く手にも思いがこもります。「残したものには、間引いたものの分まで頑張って育ってくれっ、お前、ここはいい場所なんだからなって、ついつい心の中で声を掛けてしまいます。」毎年自家採種すれば種はたくさん手元に残ります。間引くことを前提にできるのも自然農だからこそであり、間引く作業から生じる、こんな自然との応答が楽しいのも自然農だからこそかもしれません。

左の写真はダイコン、右がハクサイ。同じアブラナ科の野菜でもダイコンに比べ結球するハクサイの栽培には地力が必要。最後まで育った強い種がDNAを受け継いでいく。

応援するように豆を蒔く

自然農ではコンパニオンプランツ(共栄作物、共存作物)という考え方も大いに利用します。「とくに根菜類と組み合わせるとよいのがマメ類です。豆の根っこには根粒菌という菌が付き、これが根菜類を育てる際に応援団のような働きをします。」根粒菌は空気中の窒素を吸収し固定する(窒素固定)性質があるため、植えているだけで土壌を肥やすことが知られています。そして、マメ類の中でもとくに応援する力が大きいのが落花生だそうです。「落花生は抜群です。その次は枝豆、大豆、エンドウ豆、スナックエンドウ、インゲン豆という感じです。」

雑草と呼ばれるカラスノエンドウにも根粒菌が付くため、しばらく放置されていた土地にカラスノエンドウを見かけるようになると、畑になる準備が整いつつあると感じられるそうです。

なお、大豆より枝豆が強いのは、収穫時期の違いからで、大豆として収穫する頃には根粒菌の働きが弱まってしまうためとのことです。また、コンパニオンプランツとしてマメ類を植える時期も組み合わせる野菜によってタイミングがずれていたほうがいいそうです。「同じタイミングだと競争関係になってしまい、共生関係にならない場合があります。」例えば、ニンジンやダイコンは9~10月ごろに種まきをしますが、エンドウ豆なら少しずらして11~12月でも蒔けます。」根菜類がある程度育ってきたタイミングで豆を蒔くとちょうどよいようです。

作物の生育状況を見ながら、まさに応援するように豆をまく。たくさんの応援団を備えておけるのもまた、自家採種する自然農の面白さだと藤松さんは仰います。次回はさらに季節が進んだ場合の作物について伺いたいと思います。

ダイコンの合間から芽を出したエンドウ豆。

落花生は最高の応援団。右の写真は自家採種した作物の種たち。種にも個性が現れている。個性を生かすことが、作物が伸び伸びと生長するカギとなる。

来年の「美味しい冬野菜づくり」を目標に、
まずは、近くの側溝、公園や神社などで落ち葉を集めての
『堆肥づくり』からL e t ’s T r y! さぁ、始めましょう!!
<必要なもの>*6畳ほどの畑で使う量の目安
広葉樹の落ち葉:45リットル袋で、10~15袋くらい
(ぬか):洗面器3杯くらい
水:20~30リットルくらい
*落ち葉や米糠、水の量は大体で構いません。自分の作りたい量で、変えていってください。

<道具>
スコップ・ジョウロ・ブルーシート

<作り方>
①広葉樹の落ち葉を集める。
 45リットルごみ袋で10袋くらい。
 木の枝などは分解が遅いので、取り除く。

②浅く腐葉土を作る穴を掘る。
 20センチくらいの深さで、1m四方くらいの大きさ。
 掘った際の土は、最後に被せるのでとっておく。

③腐葉土、米糠をよく馴染ませるように踏んで、水をかける。
 この工程を何回も繰り返して積み重ねていく。

④掘った際の土を最後に被せてから、ブルーシートを被せて飛ばないように四隅を抑える。

⑤1ヶ月に一度は土を底からひっくり返して切り返す。
 中に空気を入れるためです。

⑥半年から一年で腐葉土になる。
匂いが山の土のようになれば完成。どぶ臭い場合は、まだ分解途中です。