家庭だからできる自然農
皆さんは「自然農」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。農薬や肥料がないと作物は育たないと思っている方も少なくないかもしれません。しかし、作物は自然の力だけで十分に育ち、むしろ、そのほうが栄養のある美味しい作物を育てることができます。そして何より、自然のサイクルを活かした栽培方法は、持続可能な農業のあり方といえます。この連載では、自然農と家庭でできる農業について考えてみたいと思います。
Vol.9 自然農で、家庭菜園を、愉しもう!(まとめ)
慣行農法・有機農法・自然農とは?
農法 | 農薬 | 肥料 | 機械化 | 大規模化 | 安全性 | 味 |
---|---|---|---|---|---|---|
慣行農法 | 農薬使用 | 肥料化学肥料 | 機械化可能 | 大規模化可能 | 安全性低い | 味悪い |
有機農法 | 農薬不使用 (原則) |
肥料有機肥料 (原則) |
機械化可能 | 大規模化可能 | 安全性中間 | 味ばらつき有 |
自然農 | 農薬不使用 | 肥料不使用 | 機械化不向き | 大規模化不可能 | 安全性高い | 味良い |
-
1
安全な作物が食べられます。 -
2
自家採種により、間引きながら(間引いた野菜もいただきます)家庭の味、旬の美味しさを長く愉しめます。 -
3
“来年はもっと美味しい野菜を採ろう!”と、作物を育てる愉しみが増していきます。 -
4
子育ての中で、小さな虫も含めさまざまな生き物との繋がりを子ども自身が身体で覚え、自然への感謝、命をいただくことについてを学べる機会が生まれます。 -
5
野菜を買わずに済むので、食費が浮きますね。
- 土地の大きさ
ムリなく長く続けられる規模──1部屋(6畳間・約10㎡・約3坪)位から。 - 土づくり
堆肥を漉き込むことで、一年目から育てることができます。 - 堆肥(*『堆肥づくり』をご参照ください)
わざわざ買わなくでも側溝の落ち葉などを活かすことで十分、育ちも断然いい。 - 畝を立てる
ニンジンは好光性種子、ダイコンは嫌光性種子、というように、種の特性や原産地の気候などを調べながら、その種に合った蒔き方をしてみましょう。 - 間引き
自然農では、毎年自家採種しながら、多くの種を手元に残すことができるので、間引くことを前提にできます。間引く作業から生じる、自然との応答も愉しい。 - コンパニオンプランツ
コンパニオンプランツとは、共栄作物・共存作物をいいます。自然農では、この考え方を大いに利用します。特に相性のいい組み合わせが、根菜類とマメ類。さらにマメ類の中でも根菜類を育てるのに応援する力が大きいのが落花生です。作物の生育状況を見ながら、まさに応援するように豆を蒔きましょう。 - 育苗について
家庭での農業・家庭菜園であれば必ずしも育苗する必要はなく、暖かくなってから種を直に蒔けば十分です。もしも、がんばって育苗をするぞ、という場合でも、畑に植える全部を育苗する必要はありません。できる範囲で少しずつ、はじめていきましょう。なお、育苗のためのビニールハウスは、農業用のビニールハウスにて、ホームセンター等で購入できます。しかし、専用の資材でなければいけないというわけでなく、骨組みは竹を使用するなどで代用できます。要は防寒ができて、ある程度太陽熱が透過すればよいので、屋内の陽当たりが良いところでも、育苗は可能です。
「多品種・少量生産」
家庭菜園の魅力は?
「目が行き届き、こまめにお世話ができる。
だからこそ、栄養の生長を促し、
長く収穫を愉しめます」
藤松さんおすすめの種類とコツ
ナス・ピーマン・シシトウ・カボチャ・キュウリ・トマト・ゴーヤ/サツマイモ・サトイモ・ジャガイモ/ラッカセイ・エダマメ
(サツマイモ・サトイモ・ジャガイモ・ラッカセイは、10月以降~)
◎サツマイモ・サトイモ・ジャガイモ、ミニトマト・シシトウは、手間がかからない。
◎ナス・ピーマン・大玉トマトは、手間がかかる。(地力と水の管理が必要)
*ナス/必要に応じて、米糠や堆肥の投入が必要。
最初の一果は、早く摘む(木が大きくなり、長い収穫時期が可能になる)。
*ピーマン・大玉トマト/虫がつきやすい。
◎ラッカセイ・エダマメは、夏の「コンパニオンプランツ」として、常に組み合わせる。
丈夫で虫にも強いイモ類は、お薦め。
でも、手間暇かけられるのが家庭菜園の良さ。夏野菜も、ぜひチャレンジを!
ハクサイ・キャベツ・レタス・チンゲンサイ/ニンジン・ダイコン・カブ/ネギ・シュンギク・タマネギ・ニンニク/エンドウマメ・スナックエンドウ
◎結球野菜(ハクサイ・キャベツ)は、地力が必要(無施肥だと、収穫は春になる)
◎サニーレタスは、早く収穫ができる。
◎無農薬・無施肥にこだわる場合は、晩生の品種を選ぶ。
◎収穫時期を長くしたい場合は、早生の品種で時期をずらしながら栽培する。
◎エンドウマメ・スナックエンドウは11月後半頃から投入、冬の「コンパニオンプランツ」として用いる。
冬野菜は、夏野菜に比べてハードルが低いので、初心者にはお薦め。ニンジン・ダイコン・カブ・チンゲンサイは、発芽して以降、間引きしながら冬の間中食べられるので、家庭菜園にはもってこい!
【 特徴・注意点 】
◎夏/ナス科の作物を栽培。→冬/アブラナ科の野菜(ハクサイ・キャベツ)を育てる。
・夏に地力が必要だったナスのあとに、冬に地力を必要とする結球野菜を植える。
-
トマトもナス科 -
雑草の中に育つ白菜
◆ ◆ ◆
◎夏/ウリ科の作物を栽培。→冬/根菜類を育てる。
-
ウリ科のかぼちゃの苗 -
草たちの中で育っている大根
【 一言アドバイス 】
こうした組み合わせを自分で発見すると、家庭菜園が、なお愉しくなります。
【 大切なメッセージ 】
収穫を終えたら、「種採」を忘れずに!
見た目がよく食べて美味しい、そんな野菜が育ったら、食べ切らずに、種を採っておきましょう。自分の菜園ならではの、その土地ならではの野菜の美味しさを、ぜひ。
藤松さんが自家採種した種
農作物はもともと自然のものであって、そもそも種だけで育つわけではありません。土や太陽、水など、その土地の恵みや微生物の働きがあってこそ育ちます。そして、代々種が引き継がれることで、地域らしさや多様性が育まれていきます。もとの種は同じでも、こうして、だんだんと、少しずつ、その土地の作物になっていく。この多様性こそ、地域独特の風味や美味しさを生み出す源となっていたはずです。
本来、このような国の動き・方向に対して、食の流通の末端にいる一般の人々がきちんと判断ができる、というのが理想の姿だと思います。そのためにも、食べ物についてを他人任せにするのではなく、積極的に食と係わることが重要です。この点からも、家庭菜園に取り組み、自分の手で作物を育てるということは、とても大切な意味のあることだと思います。
これからさらなる議論の高まりが生まれ、日本の農業や食物について多くの方々が見つめ、考え直す契機になればと、切に願っています。
<必要なもの>*6畳ほどの畑で使う量の目安
◎広葉樹の落ち葉:45リットル袋で、10~15袋くらい
◎米糠:洗面器3杯くらい
◎水:20~30リットルくらい
*落ち葉や米糠、水の量は大体で構いません。自分の作りたい量で、変えていってください。
<道具>
◎スコップ・ジョウロ・ブルーシート
<作り方>
- 広葉樹の落ち葉を集める。
45リットルごみ袋で10袋くらい。
木の枝などは分解が遅いので、取り除く。 - 浅く腐葉土を作る穴を掘る。
20センチくらいの深さで、1m四方くらいの大きさ。
掘った際の土は、最後に被せるのでとっておく。 - 腐葉土、米糠をよく馴染ませるように踏んで、水をかける。
この工程を何回も繰り返して積み重ねていく。 - 掘った際の土を最後に被せてから、ブルーシートを被せて飛ばないように四隅を抑える。
- 1ヶ月に一度は土を底からひっくり返して切り返す。
中に空気を入れるためです。 - 半年から一年で腐葉土になる。
匂いが山の土のようになれば完成。どぶ臭い場合は、まだ分解途中です。
◆ ◆ ◆
Tel:080-8025-3680
Eメール/fujimatsushizennouen@gmail.com
藤松自然農園の無肥料・無農薬・天日干し(一部は機械乾燥)のお米、
今年(2021年)の新米は、10月18日より発売開始です。
● 5キロ 5,000円(送料・消費税込み)
●10キロ 9,000円(送料・消費税込み)
※品種はコシヒカリです。
ご購入を希望される方は、
下記メールアドレスまでご連絡下さい。
fujimatsushizennouen@gmail.com