森里海の色
木版画が彩る世界「ヤマユリ」

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉があるように、ユリは美を象徴する花の一つです。


 
「歩く姿は〜」にあるように、日本でもユリは人気だが、キリスト教圏では、白いユリは純潔を表し、聖母マリアを象徴するものとして人気がある。

ヤマユリは日本原産で、シーボルトによってヨーロッパに持ち帰られた。前述のとおり、ユリはキリスト教にとってなくてはならないものだ。ヤマユリは大きくて立派だけど、版画にあるように、黄色い筋と赤い斑点がある。これをなんとか白い花弁にしたい、と品種改良が重ねられて、今ではヤマユリを原種に持つ園芸種のカサブランカが人気だ。

シーボルトが持ち帰ったのはヤマユリだけではなく、イタドリもそうだった。イギリスにもシーボルトによってイタドリがもたらされ、当初は観賞用に、ともてはやされたものの、猛烈に繁殖するために忌み嫌われ、イタドリが生えていたら不動産価値がさがる、ともいわれている。

このイタドリに例えられたのが、先にイギリスの保守党を辞任したメイ首相だ。EUの離脱合意が度々否決されてもなかなか辞めない、というしぶとさ、根の深さ、ということのようだけど…

イタドリは日本では、そこまで困った植物としては扱われていない。生態系の中から、あるひとつだけを取り出して他に持っていくことがどんなに危険か、端的に表している。ユリはたまたま(人間にとって)成功して、イタドリはたまたま失敗しただけ、なのかもしれない。

文/佐塚昌則