森里海の色
木版画が彩る世界「ヤマアジサイ」

アジサイといえば、雨・水のイメージ。けれど近頃の雨は、アジサイと愉しめるほど、しとやかなものばかりではなくなりました。


 
ヤマアジサイは、山の中で見られるアジサイの仲間で、いわゆる普通のアジサイと比べると、小ぶりで可愛らしい花を咲かせる。

山の中でも、水際に生えていることが多く、サワアジサイの別名もある。アジサイは、梅雨のイメージとも重なって、とにかく「水」に縁がある花だ。

英語では「Hydrangea(ハイドランジア)」という。水を表す「hydoro(ハイドロ)」が語源だから、やはり洋の東西を問わず、水のイメージを持っているのだ。

このアジサイ、花の色がとても多彩なんだけど、実は、土の酸度によって花の色が変わるという。酸性側に振れれば青色に、中性〜弱アルカリ性の土壌ではピンク色の花を咲かせるという、まるでリトマス試験紙のようだ(リトマス試験紙とは色が逆だけど)。

園芸種としては、花の色を安定させる必要があるかもしれないけど、むしろ、その場所の土と水が作り出した、自然の中で生まれた色を愛でるのも、また楽しいのでは。

ところが、水の話は楽しいばかりではない。ここ数年、毎年のように豪雨災害が起こっている。災害級の豪雨の多くは6月から8月に発生している。
集中豪雨は地球温暖化の影響を受けている可能性があるが、このところよく聞く線状降水帯は、必ずしも温暖化との因果関係が立証されていない。

先般、九州の豪雨で、いくつかの市で、市内全域に避難指示が出た。市内全域の避難、というのは、果たしてどうすればいいのか。
豪雨災害では、より安全なところに水平避難するしかない、というのが定説だし、けれど住民は正常性バイアスにとらわれて逃げない、というのも定説だ。
平静時に考えておかなければ、緊急時に対応を誤ることになる、ということだろう。わかっちゃいるけどむずかしい。がんばろう。

文/佐塚昌則