森里海の色
木版画が彩る世界「サラサドウダン」
サラサドウダンは、日本原産のドウダンツツジの仲間。吊り下がった特徴を持つ花が、版画でも見事に表現されています。
サラサドウダンは、ドウダンツツジの仲間で、花冠にある模様が更紗染めのようだ、ということから来ているそうだ。
ドウダン、というのは、枝分かれした様子が灯台(といっても、船を導く灯台ではなくて、三本の棒を結んで立て、その上に火を灯す燭台)に似ているから、ということらしい。
実はドウダンツツジには、これとは別に「満天星」という漢字もあてられている。どう見てもあて字なこの名の由来は、中国の故事に由来している。
封神演義や西遊記にも登場する太上老君(老子が神格化された姿)が、霊薬を練る際に、誤ってこの木にこぼした玉盤の霊水が、まるで満天の星のように輝いたから、ということに由来する。
更紗はインド、満天星は中国、けれどサラサドウダンは日本の固有種だ。
さらに、満天星(Doudantsutsuji)と名がついた小惑星が有る。1991年に日本で発見され、ドウダンツツジにちなんで名付けられた。満天の星のようだと名付けられた「満天星」を、その中の一つの惑星の名前にしてしまうのも、なんだかなあ、と思わなくもない。
この連載で、たびたび植物の名前にこだわるのは、その由来や背景を知ることで、モノと自分の関係が変わってくるし、その変化を楽しんでほしい、という思いからだ。
牧野富太郎は、「漢名を用いそれに仮名を振って書くのは手数が掛り、全くいらん仕業だ。例えばソラマメはソラマメでよろしく、なにも煩わしく蚕豆と併記する必要はない。」と述べている。牧野博士の図鑑は大好きで愛読しているが、でもこの案には賛成できない。
表意文字文化を楽しもうではないか。
文/佐塚昌則