森里海の色
四季の鳥「ウソ」
口笛を吹く太っちょ
冬の休日の午後、枯れ草を踏む音と風の音だけを聞きながら人気のない林道を耳をすませて歩いていると、フィフィ、フィフィという鳴き声が聞こえてきました。辺りを探すと、いました。頭と体が一体になったようなふっくらした卵形の体形、それを覆うやわらかいグレーと喉の辺りに品のある赤。ウソです。いや、いや、本当です。ウソというのは鳥の名前。漢字で鷽と書きます。
「ウソ」は口笛を意味する古語で、鷽の鳴き真似をすることから転じて「うそぶく」という言葉が生まれたようです。確かにウソの「フィフィ」という鳴き声は口笛のような声です。
ウソの声は不思議なことに遠くでも近くでもあまりその大きさが変わらずに聞こえてきます。もっと先だろうと歩を進めると、目の前で出くわし、びっくりすることがあります。決して警戒心の強い鳥ではなく、食事中はかなり近くまで近づいても逃げません。
冬の時期、林道で彼らが食べていたのはイノコヅチ、ヒメウツギ、ナギナタコウジュの種子。イノコヅチの種子はかなりの割合で食べ尽くされていました。気を付けて観察すると、イノコヅチの枝にはウソの羽が付着していました。他にアオジやコジュケイの羽も付いていました。種子のほとんどが食べられても、種子をひっつけたこれらの鳥がどこか遠くに散布してくれれば、イノコヅチにとっては採算がとれるのでしょう。
細いイノコヅチやウツギの枝に、サーカスの空中ブランコのように倒立姿勢で、あるいはホバリングしながら種子を食べる身の軽さをもった太っちょのウソが私は大好きです。サクラやフサザクラが芽を吹き彼らの食べ物になる頃、そろそろ繁殖地である亜高山帯の針葉樹の森に帰る日も近くなります。