森里海の色
四季の鳥「アオゲラ」

日本固有の啄木鳥

啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋櫻子

朝、自宅で食事をしていると、裏山からピューピューピュー、ケケケ……とアオゲラの鳴き声が聞こえてきました。

啄木鳥は秋の季語ですが、啄木鳥の仲間であるアオゲラは本州以南に生息する日本の固有種で、四季を通して山地や都市公園で見ることができる比較的身近な鳥です。大きさは全長29cm、ヒヨドリほどの大きさです。

Japanese Green Woodpeckerと英名が付けられているように、背のオリーブ色が目立ち、喉は白く、お腹は白に黒褐色の横斑があります。雄も雌も頭の天辺はお洒落な赤色をしていますが、雄のほうが赤い部分が頭の前面まで広いことで区別が付きます。

けらつつきふかき眠りの木を叩く 永井一穂

アオゲラ-緑啄木鳥

裏山からはアオゲラが木に穴を開けるドラミングの音が聞こえてきます。アオゲラは両脚と丈夫な尾羽の三点支持で垂直な樹幹に止まり、嘴をまるで電動ノミのように使って穴を開け、長~い舌を入れてカミキリムシの幼虫などを食べます。木を啄くスピードは一秒間に20回と言われています。人間ならたちまち脳しんとうを起こしてしまいそうですが、啄木鳥の脳は分厚い筋肉とスポンジのような骨に守られ、眼球も3つのまぶたによって衝撃で飛び出してしまうことがない構造になっているそうです。

裏山でアオゲラのカップルの求愛行動を目撃したことがあります。3メートルほど離れた2本の木の幹をそれぞれ雄と雌が全身を大きくメトロノームのように左右に振りながら登っていきます。雄はピピピ、フィフィフィと鳴いて雌のいる幹に移り、向かい合ってお互いの嘴をチャンバラごっこのように叩き合います。その求愛の秘め事を覗き見たときは、なんだか神聖なものに出会ったような気分になりました。まだ裏山で繁殖行動や子育てのようすを観察したことがありませんが、いつか見たいものです。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。