森里海の色
四季の鳥「マヒワ」

冬の黄色い鳥

マヒワというスズメよりも小さな黄色い鳥がいます。北海道や本州中部の山岳地帯では少数が繁殖していますが、多くは10月頃、繁殖地の中国北東部から日本にやって来て、4月に帰る冬鳥です。平地よりも早く実を付ける山間部に最初に訪れ、秋の深まりと共に平地に降りてきます。マヒワは秋の季語になっていますが、バードウォッチングで見かけるのは真冬から春先にかけてが多いように思います。
シーズンに1、2度、マイフィードにしている近くの林道で見かけることはあっても、いざ探そうとするとなかなか見つけられない鳥です。彼らが好んで食べる樹木の種子が年によって豊作であったり、そうでなかったり変化が激しく、食べ物のある場所を求めて大群で移動しながら生活をしていることが、彼らに出会うチャンスが少ない理由だと考えられます。

真鶸

マヒワの雄は雌よりも全体に黄色が濃く、頭部と喉の辺りが黒いので、雌雄の区別は容易です。飛んでいると、黒っぽい翼の中に鮮やかなレモンイエローが目立ちます。今日では野鳥を飼育することは禁止されていますが、その美しさゆえにかつては愛玩用によく飼育されていた鳥です。ヒワは漢字で「弱い鳥」(鶸)と書きますが、これは飼育するとよく死んでしまうことに由来していると言われています。
彼らの食べ物は秋・冬にはハンノキやヤシャブシ、カラスザンショウ、スギ、カラマツなどの木の実で、尖った嘴は松かさの中から種子を取り出すのに具合良くできています。春になるとクヌギやコナラ、ケヤキなどの新芽や花穂が彼らの食べ物になります。
11月、マヒワが来ていると聞いて、都内の公園に行きました。広い公園のなかでまずハンノキの生えている場所を探します。ハンノキの下で待っていると、20羽ほどのマヒワが舞い降りてくれました。ハンノキの実はまだ当分ありそうです。葉が落ちて、もう少しマヒワが見やすくなった頃、また見に行きたいと思っています。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。