森里海の色
四季の鳥「ミヤコドリ」
渚の赤いくちばし
名にしおはば いざこと問はむ みやこ鳥
わが想う人は ありやなしやと
「伊勢物語」の有名な在原業平の歌です。このようにミヤコドリの名前は古く「伊勢物語」に登場しますが、「伊勢物語」では「白き鳥の嘴と脚と赤き、しぎの大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ」と書かれていて、どうやらこの鳥はユリカモメのことではないかと推定されています。
本当のミヤコドリはミヤコドリ科に属する鳥で、赤いくちばしと脚と目を持ち、黒と白のツートンカラーという誰でも一度見たら忘れない際だった特徴を持っています。日本にはカムチャッカ半島などから毎年、越冬のために飛来します。
私がシギやチドリの観察によく行く三番瀬は、今ではミヤコドリの国内最大の越冬地になっていますが、20年ほど前まではごく少数しか飛来しませんでした。近年、次第に数が増え、300羽を超えるまでになっているのは、それだけ彼らが好む餌が豊富にあるということなのでしょう。
ミヤコドリの英名はOystercatcher。その名の通りカキなどの二枚貝に長くて丈夫なくちばしを差し込み、貝柱を切り裂いて中身を食べます。三番瀬ではマテ貝、アサリ、カニ、ゴカイをよく食べています。
ミヤコドリは警戒心が強く、いつも他のシギたちの遠方にいて近づくことを容易に許してくれません。撮影したのは9月下旬。写真を見ると、虹彩の赤がまだ鮮やかでなく、肩羽や雨覆に茶色の羽が混じっています。くちばしの色もオレンジが混ざり、先が黒っぽいことなど、観察した個体は成鳥ではなく、今年生まれか、2年目の若鳥でした。秋から冬に季節が移るにつれて越冬する数も増えていきます。厳寒の頃に今度はもっと近くで、成熟した成鳥の姿を見に訪れたいと思っています。