森里海の色
四季の鳥「ノスリ」

空の一角に停止する猛禽

朝、外に出ると空は抜けるような晴天。でも顔に当たる風はまだ冷たい。こんな日は空に猛禽類が飛んでいないか、時々空を見上げながら仕事場までの道を歩きます。信号待ちをしながら近くの山の上を見上げると、1羽の猛禽が空の一角に張り付くように停止しています。軽くはばたきながらホバリング(停空飛翔)して、下に獲物がいないか探していたのはノスリです。

ノスリは神奈川県下では秋から春にかけてほとんどの地域で見かけることのできる猛禽です。トビに次いでポピュラーなタカの仲間と言えます。飛翔しているときのトビとの識別は容易です。トビより一回り小さく、ずんぐりした体型。尾羽はトビがバチ型をしているのに対してノスリは円尾。翼下面はトビが黒褐色に初列風切羽基部に白斑があるのに対して、ノスリはその逆に白に近い淡褐色に黒斑があります。

鵟

ノスリの獲物は主に小鳥です。どんな鳥を食べているか、日本野鳥の会神奈川支部の鳥類目録(2006-2010)を調べてみると、ヒヨドリ、カワセミ、カワラヒワ、ヒバリ、ツグミ、カモが観察記録として記載されていました。

私が間近で見たノスリの獲物はコジュケイ(キジ科の外来種)でした。バードウォッチングを始めて間もない頃のことです。息子がまだ小学生で、鳥の羽をコレクションすることに夢中になっていた頃でした。自宅から少し山を登って、私たちが「上の畑」と呼んでいる辺りに、鳥の羽が落ちていないか探しに行きました。そこは地主から土地を借りて地域の人たちが小さな畑にしています。先を歩いていた息子が、畑のネットのなかに大きな鳥がいることに気付きました。近づくと、それはなんとノスリでした。ノスリはネットから逃れようと何度も飛び立ちますが、ネットにぶつかってしまいます。細いテグスで編まれたネットはノスリには見えていないようです。ネットの周囲を探すと、ほとんど食べられて頭だけになったコジュケイの死骸がネットに絡みついていました。コジュケイがネットに絡まり、それを捕食しようとしたノスリも二次災害に遭ったようでした。絡んだテグスを外しノスリを救出しましたが、翌朝、妻と息子が畑に行くと、またノスリがテグスに引っかかっていました。ノスリを救出し、コジュケイの屍体を埋め、もちろん落ちた羽根は採集して、二人は意気揚々と戻ってきました。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。