森里海の色
四季の鳥
「カンムリカイツブリ」

春の海に集結する大型カイツブリ

昨日の寒さがぐんと和らいだ休日、久しぶりに海に散歩に行きました。家の裏山を登り、尾根に出てから西に突き出た海側に降りていきます。相模湾の向こうには丹沢山系から富士山、伊豆の山々、その左には伊豆大島がくっきり見えています。双眼鏡を取り出して海上を見ると、海岸からほど近い波間にいくつもの大型の海鳥が浮いているのが見えます。白い長い首が光って、遠方からでもそれがカンムリカイツブリだとわかります。
カンムリカイツブリは日本で見られるカイツブリ科のなかで最も大きな鳥です。国内でも局地的に繁殖が確認されていますが、神奈川県では冬鳥として海上や大きな河川、湖にやってきます。「カンムリ」と名前にあるのは、この鳥の夏羽の頭部が黒い冠をかぶったように見えるからです。潜水能力が高く、潜って小魚を捕らえて食べます。

冠鳰

カンムリカイツブリが自宅近くの狭いエリアの海に春先に集まってくるのはなぜでしょう。考えられる理由の一つはカップル選びです。繁殖地では一夫一妻でつがいが縄張りをつくって分散するので、越冬地で結婚相手を見つけていると考えられます。もう一つはこのエリアの海は海岸に近づく人が少なく、また水深が浅いので小魚を潜って捕るのに適しているからでしょう。
この日、数えた個体数は75羽。3月に入って急に群の数が増してきました。繁殖地である中国大陸に戻っていく日はもう間もなくです。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。