森里海の色
木版画が彩る世界「キンエノコロ」

キンエノコロは、エノコログサの一種で、イネ科の一年草です。漢字では「金狗尾」、金色の犬の尻尾のような草、ということですね。


 
キンエノコロを含むエノコログサの仲間は、イネ科に属している。いつもあたる牧野日本植物図鑑には、「ゑのころぐさ」とあるが、実はこのときは「ほもの科」とされている。後に発行された牧野新植物図鑑では、「いね科」とされている。「ほもの」は形態をあらわし、「いね」は代表する植物を指す。
国際植物命名規約でも、イネ科は、本来科名につける「-aceae」を持たない「Gramineae」で通っている。
イネ、コメは日本では精神的に特別な植物ではあるが、それが科名にまで影響している…わけではないだろう。身近にあったから、古くから分類されている分、後発のルールに合わなくなった、というところだろうか。

さて、エノコログサ、というのがこの種の属名なわけだけど、「猫じゃらし」といったほうが通りがいいかもしれない。「エノコロ」は形態、「猫じゃらし」は行為であって、これまた視点が違う。

我が家には4頭の猫がいるが、みな歳をとって、何かにじゃれる、ということが少なくなった。「人間でいうと何歳」みたいなヤツでいうと、ついにすべての猫に追い抜かれてしまった。けれど、彼らには彼らの時間が流れているのだからしかたない。ましてや、キンエノコロは一年草だ。実際には一年も立たずにその生涯を終える。

陰陽五行では、季節を人生に投影して、青春、朱夏、白秋、玄冬という色を割り当てている。それぞれの季節、それぞれの時間でみな生きているのだけど、つい自分の物差しばかりでみてしまうし、みられているだろうなあ。

文/佐塚昌則