森里海の色
木版画が彩る世界「ナナカマド」
山が色づき始めました。ナナカマドは、赤い実をつけた後に、葉も紅葉します。これでもか、というほどに赤くなる、その印象的な様子が版画でも再現されました。
ナナカマドは、七回竈に焚べても燃え残るためにこの名がつけられた、という説がある。実際には燃えやすい木だ、という説もある。
残念ながらナナカマドを燃やしたことがないし、燃やした知り合いもいない。むしろ、ナナカマドにはもう少し現代的な話題が潜んでいる。
ソルビン酸という物質がある。ソルビン酸のカリウム塩であるソルビン酸K(カリウム)は、食品保存料としてよく用いられる。『買ってはいけない』でやり玉にあげられたので、ご存知の人も多いだろう。このソルビン酸(sorbic acid)、実はナナカマド(sorbus aucuparia) から発見された、自然由来の物質だ。名前はナナカマドの学名に由来している。
食品添加物というと、とにかく悪いもの、と考える人がいる。僕もソルビン酸Kが入った食べ物を積極的に食べようとは思わない。けれど、こういうリスクは、ほとんどが「絶対量」の問題で決まる。ホンのちょっとしか摂取しないソルビン酸Kと、ついガブガブと飲んでしまうアルコールのどちらがリスクだろうか。
モノの性質だけをアレコレいうより、使い方が重要ということだ。
ソルビン酸のことが嫌いでも、ナナカマドのことは嫌いにならないでください。
文/佐塚昌則