森里海の色
木版画が彩る世界「スダジイ」
大木に見合わない、かわいらしいドングリをつけるスダジイ。この実は食べてもなかなかイケます。
スダジイは古式ゆかしい「糖質」である。
ここ数年、「糖質制限ダイエット」が幅をきかせるようになった。私などは、米をおかずにご飯を食べたいぐらいだし、一番好きな酒も米由来の日本酒、というぐらい米依存だから、その説に屈したくないが、順調に増える体重を考えると、一理あるのかなあ、などとも思う。
この糖質制限の肯定派が言うには、「人類が糖質を摂るようになったのは農耕以降であり、本来糖質は不要」だとか。
だが、少なくとも稲作伝来前の縄文時代には、糖質は摂られていたようだ。
このスダジイが、いい例である。
椎の実は、重量の半分以上が炭水化物(≒いわゆる糖質)である。縄文人がドングリ類を食べていたことはよく知られているし、クリの栽培も行っていたことがわかっている。稲作以前から、日本人も糖質を摂っていたのだ。
少なくとも、縄文人は糖質を摂っていなかったから健康、なんてことはない。それでも、寿命は現代人のほうがずっと長い。
実際にスダジイの実を食べたことがあるが、炒るだけで、ほんのりと甘みもあって、なかなか美味しい。ただ、小さな実だから、これで満腹になるのは大変だろう。むむむ、そうすると自動的に糖質控えめ、になっていたのかな…
スダジイは、燃料だったり防風だったりの用途にも使われてきたし、御神木にもよく見られる。その上、食べられるとくれば、本当にオールラウンドな樹である。
文/佐塚昌則