森里海の色
木版画が彩る世界「アセビ」

ちょうど今頃の時期に、小さな白い総状の花をつけるアセビ。でも、綺麗な花には毒が…


 
アセビは漢字で「馬酔木」と書く。完全な当て字である。名前の由来は諸説あるが、共通するのは、この植物は有毒である、ということだ。

有毒な花や樹皮を食べた馬が、まるで酔ったようにふらつくから「馬酔木」だとか、足の機能がそこなわれることで呼ばれた「足癈(アシジヒ)」が転じた、だとか、毒性を虫除けとして使い、山遊びをするから「アシビ(遊び)」という話もある。最後のやつなどはけっこう無理やりな気もするが、毒の転用、という意味では興味深い。

この冬、僕は1ヶ月以上にわたって咳が止まらず、出張先でも医者にかかるなどして、あれこれと薬を飲んだ。そのうち血液検査をしてみたら、肝臓の値が悪いと言われる。そのうちもう一度検査したら、そんなに悪くなかった。なぜか。投薬の影響もおおいにある、と思っている。

肝臓というのは、「毒素を解毒する」などと説明されることがある。食べ過ぎ飲み過ぎ運動不足で「毒素」が貯まると脂肪肝になる。思い当たるフシがありすぎるが、いままで酒の量の割に肝臓は元気だった。投薬中に値がおかしくなって、薬をやめたらもとに戻った。だとすると、やっぱり薬のせいなのかな、と思っている。

毒と薬は使いようによってどちらにでもなる、ということを、身をもって知った(とはいえ、肝臓の異常値なんかは、自覚症状はないから、あくまで検査結果で思い込んだ、だけだけど)。

「毒にも薬にもならない」という言葉がある。昔は悪口だと思っていた。今は差別化の表現のようにも思える。大抵の植物は有毒で、量や使い方によって薬にもなる。
大抵の人間もそうだ。「量と使い方」っていうのが難しいんだよね。

文/佐塚昌則