
森里海の色
四季の鳥「コシアカツバメ」
燕帰る
燕は春の季語ですが、秋の季語に燕帰るがあります。帰燕、秋燕、去ぬ燕なども同様です。
夏の間、人家の近くでかわいい子育てを見慣れていたツバメが、ある日気が付くと周囲から消えていた。そんな寂しさを詠んだ句が昔から多く残されています。
落日のなかを燕の帰るかな 蕪村
燕はやかへりて山河音もなし 楸邨
燕去んで部屋部屋ともす夜となり 碧梧桐
10月初旬、秋晴れの朝に出勤途中の電線の上にたくさんのコシアカツバメが集まっていました。毎年、同じ時期に同じ電線に集まります。群をつくってこれから南に帰るのです。コシアカツバメはツバメの仲間で、海岸近くに多く生息する鳥です。嘴の下からお腹にかけて白く黒褐色の縦斑があり、飛ぶと腰の部分の橙色が目立つので、他のツバメの仲間と識別することができます。ジュリィジュリィと、ツバメのチュピッよりすこし濁った声で鳴きます。
私が暮らす地域では普段ツバメを市街地で目にすることが多いのですが、コシアカツバメを目にすることはあまりありません。彼らが団地の高層階の踊り場のような高いところを好んで営巣することも人の目につきにくい原因なのでしょう。
コシアカツバメが群をなして電線に止まるのは数日間。今朝も見られるかなと楽しみにしていると忽然と消えている。そんな経験を毎年のように繰り返しています。