森里海の色
四季の鳥「フクロウ」
威厳ある森の住人
私の暮らす町では、ほぼ一年を通じてフクロウの声を耳にします。仕事を終えた夜8時頃、暗闇で「ホッホーホロッコホッホー」と鳴くのを聞きながら家路を辿る日は、何か少し得をした気がします。「ホッホーホロッコホッホー」と鳴くのは雄で、時々雌が「ポッポー」とそれに応えて鳴くのを耳にしますが、こちらはとても小さな声です。
今から10年以上前の12月初旬、家の裏山を歩いていると、一枚の鳥の羽が落ちていました。茶色に白い斑のある大きな羽で、エッジは揃わずに櫛形をしていました。羽ばたき音を出さないその構造はフクロウのものでした。それがきっかけで裏山にフクロウの巣箱を掛けてみたことがあります。洞があるような大木が不足しているので巣掛けをするとかなりの確率で使ってくれると、バードウォッチングの先輩が勧めてくれたからです。フクロウの巣箱は大きく、小型犬の犬小屋ほどあります。利用したのはプラスチックのゴミ箱。それに1辺15センチの入口と水切り穴を底にあけ、色を茶色に塗りました。巣箱の底に枯れ葉を敷き詰め、子どもと二人でタブの大木の7メートルほどの高さに取り付けました。
その後、巣箱はどうなったか。翌年、春になって巣箱を見に行くと、音もなく前方から大きな猛禽が襲ってきて、危うく目を大怪我するところでした。フクロウが巣箱を使ってくれていたのです。
宮沢賢治は童話に何十種類もの鳥を登場させていますが、「二十六夜」はフクロウが主人公です。
年老いたフクロウの坊さんが殺生しなければ生きていけない現実を幼いフクロウに説いています。ある朝、幼い三兄弟のうちのおとなしい穂吉というフクロウが人間の子どもに捕まり、両足を折られて倒れているところを仲間が見つけます。穂吉が坊さんの説教を聞きたいというので、仲間は穂吉を連れて帰り、人間に仕返しをしようと相談しますが、坊さんに「復讐は復讐を生むだけ」と諭されます。写真は昨冬、奥日光・戦場ヶ原で撮影したもの。フクロウには他の鳥にはない威厳が感じられますね。賢治がフクロウを年老いた坊さんにしたのもうなずけます。