森里海の色
四季の鳥「ベニマシコ」

林道沿いの赤い鳥

12月に入ると、ここ数年毎年歩いている林道があります。私が暮らす神奈川県は西に行くほど山が多く、その林道は山間部の湖に沿って続いています。舗装されているのに一般車は入れず、しかも高低差があまりないのでバードウォッチングに集中できます。
湖面に沿ったくねくねとした道を鳥を探してゆっくり歩いていると、枯れた急斜面から使い古されたハタキのような格好で重そうにヌルデの実が垂れているのが目立ちます。このヌルデにはよくツグミやジョウビタキが止まっています。
さらにS字カーブをいくつか曲がったところで、フィフィ、フィホッと小さな声が聞こえてきました。縁石沿いの枯れたイノコヅチの実を食べていたのは数羽のベニマシコ。会えて良かった! 電車とバスを乗り継いでこの林道にやって来たのは、この子たちに会うためでした。

雌の紅猿子

ベニマシコは11月頃、シベリア方面からやって来て、4月半ばまで見ることができる冬鳥です。漢字で紅猿子と書きますが、雄はお猿の顔のように全体が赤く、雌は黄褐色をしています。雌雄とも雨覆の先に目立つ白帯が2本あります。
彼らの食物はブタクサ、カラムシ、セイタカアワダチソウなど草の小さな種子やウツギ、フサザクラなどの木の実や新芽です。ベニマシコが見られるのはいつも採餌をしているときです。ベニマシコに限りませんが、冬から春にかけて野鳥を探すコツは、その時期にその種類の鳥が食べているものを探すことなのです。
ベニマシコは私にとって特別の鳥です。3年前、この林道で初めて大型レンズでベニマシコを撮影したことが、野鳥撮影に夢中になるきっかけになったからです。掲載したフサザクラの種子を食べる雄のベニマシコはその時に撮影したものです。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。