森里海の色
木版画が彩る世界「ツルウメモドキ」
新年最初の版画は、「ツルウメモドキ」。テーマは「越冬」です。この冬は猛烈な寒波に見舞われ、各地で大雪が伝えられています。自然の生きものたちにとっても厳しい冬、どのように過ごしているのでしょうか。
この冬は、いつも我が家にやってきていたヒヨドリたちが、さっぱり姿をみせていない。厳冬の影響があるのだろうか。植物たちは、それなりに実をつけて待っているのだが……。
ツルウメモドキの実は、緑から黄色になって、やがて赤い種子が現れる。まるで信号のようだ。
赤信号が「止まれ」というのは万国共通らしい。赤という色には、特別な意味合いがある。
色というのは、一種の電磁波だ。
その中で、一番波長が長いのが赤だ。波長が長いから赤は目立つ、と説明している資料もある。
でも、むしろ、人の目が赤を意識するのは、血の色でもあって、何か生命の危機を覚えるからではないかな、と思う。
さて、鳥はどうして広大な場所から、たとえば我が家の一本の木の実を見つけることができるのだろうか。
鳥には紫外線が見えている、という。目立つ赤色はもちろんのこと、紫や黒といった波長の短い色も、鳥にはよく見えているようだ。
同じ世界でも、誰にでも同じように見えているとは限らない。いわゆる環世界という概念が、僕はたまらなく好きだ。
種だけではなくて人間にもあるのかな……というのは、環世界とはまた違う問題だ、とわかってはいるけれど、つい混同したくなってしまう。
文/佐塚昌則