森里海の色
四季の鳥「ルリビタキ」

成熟したオスだけに許される瑠璃色

青い鳥を探してきておくれ。青い鳥さえいればあの子は幸せになれるのだから……。メーテルリンクの「青い鳥」ではクリスマスの前夜、魔法使いのおばあさんに頼まれたチルチルとミチルは青い鳥を探しに夢の国に出かけますが、私は師走の林道へ出かけていきます。
日本で代表的な青い鳥はオオルリ、コルリ、ルリビタキ。これをバードウォッチャーは「瑠璃三鳥」と呼んでいます。このうち冬に出会えるのはルリビタキです。ルリビタキはアジア北部やヒマラヤ山脈に分布し、日本では春から夏の繁殖期には北海道、本州、四国の山地で生活し、冬の間は低地に移動します。最近は都市公園の樹木も大きく成長し、森林化した公園内でさまざまな野鳥に巡り会える機会が増えましたが、ルリビタキも冬の公園で出会えるチャンスのある野鳥の一種です。

Tarsiger cyanurus

ルリビタキの採食物はヌルデ、ヘクソカズラ、カラスザンショウ、ツルウメモドキ、ハゼなどの植物の種子や動物ではミミズなども食べます。ホバリングしながら飛びつき種子を食べるところや枝先に止まる際に尾羽を上下させ、左右に向きを何度も変えるところ、ヒッヒッヒ、カッカッカと鳴くところは同じヒタキ科のジョウビタキによく似ています。
ルリビタキを間近で見たいと念じて林道を歩いていると、15メートルほどの距離のところに突然、ルリビタキが降り立ちました。背をかがめてじっとしていると、地面の落葉の上を採餌しながら私のほうへどんどん近づいてきます。
オスのルリビタキは頭部から上面は瑠璃色。体下面は白く、脇腹は橙黄色、クリクリした目にキリリとした白い眉斑。それに対してメスは頭部から上面、胸部分はオリーブ褐色で、眉斑もほとんど目立たないほど淡い感じです。
接近してくるルリビタキをよく見ると、まだ頭部から上面が完全な瑠璃色ではなく、オリーブがかった褐色に瑠璃色が混ざっています。どうやらこのルリビタキは生まれてから2~3年目のオス、イケメン青年です。オスは1年ほどで性成熟しますが、完全な瑠璃色の成熟したオスになるには3~4年かかると言われています。美しい瑠璃色は長生きできたオスだけに許される特権なんですね。

著者について

真鍋弘

真鍋弘まなべ・ひろし
編集者
1952年東京都生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒。月刊「建築知識」編集長(1982~1989)を経て、1991年よりライフフィールド研究所を主宰。「SOLAR CAT」「GA」等の企業PR誌、「百の知恵双書」「宮本常一講演選集」(農文協)等の建築・生活ジャンルの出版企画を多く手がける。バードウォッチング歴15年。野鳥写真を本格的に撮り始めたのは3年前から。