はじめてのこよみ暮らし
七十二候をはじめて過ごす「家族」の記録
太郎のベランダ農園
朝、ベランダから雀の声が聞こえます。
しほ あ、太郎。雀がベランダの蜜柑の樹にとまっているよ
太郎 とうとう小鳥たちがこのベランダ農園に気づいてしまいましたね。
しほ ベランダ農園? ベランダ菜園ではなくて?
太郎 農園です。野菜だけを育てているわけではないので。
しほ そういえば蜜柑があったね。
しほ この前のこよみ暮らしでは蜜柑の花が咲いていたけれど、今はどうなったの?
太郎 今はほとんど花が落ちて葉だけになっています。次は6月になったら肥料を与えます。
しほ 蜜柑の実がなるといいね。
しほ プランターには何を植えているの?
太郎 窓側が小松菜、外側が葉葱とほうれん草ですね。
しほ 葉葱とほうれん草をいっしょに植えているの?
太郎 はい。コンパニオンプランツと呼ばれていて、いっしょに植えると葉葱が日陰を好むほうれん草の太陽避けになったり、ほうれん草のえぐ味のもとになるシュウ酸を和らげてくれたりするそうです。なのでいっしょに植えています。
しほ そんな植え方があったんだね。
太郎 はい。ちなみに今朝食べた味噌汁には間引いた小松菜を入れましたよ。
しほ いつの間にか、ベランダで採れた野菜を食べていた私!
しほ これは蓬かな?
太郎 はい、移植したものです。秋に花が咲けばいいですね。
しほ だね、また蓬茶を飲みたいね。
太郎 もう時期が遅いかもしれないので来年ですね。
しほ ゴールデンウィークに常滑で買ってきた水鉢に、メダカは慣れたかな。
太郎 慣れたみたいですよ。今は緋メダカ4匹、黒メダカ5匹(うち1匹は少し色が薄い)、沼エビ3匹、タニシ4匹が生息しています。
しほ そんなに?
太郎 さきほど菜園ではなく農園といいましたが、これは漁業でもあるんです。メダカは新潟県のほうでは佃煮にして食べますし、エビの素揚げは言うまでもなく、タニシもタニシ和えにして食べます。いつの間にか食卓にあがっているかもしれませんね。
しほ えええええ! それはいやだぁ。
太郎 それと、睡蓮の葉の成長が止まらないですね
しほ 睡蓮、花は咲くのかな。
太郎 咲くといいんですけれど、鉢を移した時期が遅いので今年も難しいかもしれませんね。
しほ このベランダ農園は今後何を目指していくの?
太郎 自給自足が目標です。そしてこのベランダ農園が地域の子どもたちにとって生命の大切さと食の得難さを学ぶ場になればいいと思っています。
しほ ……我が家のベランダが、学びの場?
太郎 はい。来月には二十四節気にちなんだ雑穀企画も立てています。そして今は紹介できませんがおもしろい植物も育てています。衣食そして嗜好品がかつては住の場としか思われていなかったマンションのベランダで作れるんだということを地域の子どもたちに伝えていきたいですね。
しほ なんでそんな意識高くなった?
立ち向かうものなにもなし立葵 林甲太郎